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倉庫・工場の暑さ対策の重要性と具体的な方法を解説

2023年 RENOVATION

倉庫・工場の暑さ対策の重要性と具体的な方法を解説

倉庫・工場の暑さ対策
 

日本の夏は、年々猛暑化が進んでいると言われており、夏場になると熱中症を発症して緊急搬送される人も少なくありません。特に近年では、真夏の気温が35℃を超える日も珍しくなく、家の中で過ごしているのに熱中症に陥る危険性もあると言われるようになっています。特に、倉庫や工場などの施設では、構造的な特徴から熱がこもりやすく、毎年多くの熱中症患者を排出していると言われています。実際に、厚生労働省が公表している「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」内のデータによると、屋内で作業しているはずの製造業における熱中症発生者数は、建設業に次いで第二位に位置しています。(2019年は1位)

 
職場における熱中症による死傷災害の発生状況
画像引用:厚生労働省資料より

 
それでは、空調設備なども整備されている倉庫や工場などで、なぜこれほどまでの熱中症患者が発生するのでしょうか?当記事では、倉庫や工場の作業環境が暑くなりやすい理由と、適切な暑さ対策を行わなかった場合のリスク、また従業員の安全と健康を守るため、行っておくべき具体的な対策をいくつかご紹介します。

 

倉庫・工場の作業現場が暑くなりやすい理由

それではまず、倉庫や工場の作業環境が暑くなりやすい理由について解説します。近年では、「日本の夏はどんどん暑くなっている!」という情報を耳にする機会が増えていますが、実際のところどれぐらい気温が上昇しているのでしょうか?これについては、気象庁が公表している情報をご紹介します。

 
日本の夏平均気温偏差
画像引用:気象庁サイトより

 
上図は、日本の夏(6〜8月)における平均気温偏差の経年変化をグラフ化したものです。日本の夏の平均気温は、年度によって変動はありますが、長期的には100年あたり1.25℃の割合で上昇しているとされています。

そして、夏の気温が上昇しているだけでなく、倉庫や工場は、構造上の問題から、作業環境が暑くなりやすいと言われています。倉庫・工場の作業環境が暑くなりやすい主な理由は、以下のようなことが原因と言われます。

 

  • 内部構造の問題で熱がこもりやすい
    倉庫や工場は、施設内に大量の荷物が保管される、大型設備が設置されているなどの理由から、風通しが悪く熱がこもりやすいという問題があります。また、工場では製造する製品によって、作業中に熱が発生することから、空調設備を整備していても施設内のいたるところに熱がこもってしまうというケースが考えられます。この他、天井が高く、空間が広いことから、空調が効きにくく、作業現場が全体的に暑くなりやすいという問題があります。
  • 屋根から熱が伝わる
    倉庫や工場では、金属製の折半屋根が採用されるケースが多く、施設内が暑くなる原因の一つとなっています。金属屋根は、夏の強い直射日光に照らされることで表面温度が約80℃という高温になることがあるとされています。そして、熱せられた屋根材は輻射熱を放射することで、倉庫・工場内部に熱が伝わり、室温が上昇します。特に、倉庫や工場の中には、屋根の下に仕切りや断熱材が施工されていないケースも多く、熱がじかに伝わってしまうことで、空調の効きを悪くします。
  • 倉庫・工場の作業形態が原因で高温になることがある
    物流倉庫などは、荷物の出入りが頻繁にあることから、搬入・搬出口から外気が侵入しやすくなります。そのため、空調を利用しても室温が下がりきらず、高温状態での作業を余儀なくされるケースが少なくありません。また、工場の中でも食品工場などは、製造過程で火を使う工程が多いため、工場内の温度や湿度が高くなり、熱中症の危険が高くなります。

 
倉庫や工場は、上記のようなことが原因で、室内が高温になりやすいです。次に倉庫や工場が高温になると、どのような問題が発生するのかも見ていきましょう。

 

倉庫・工場における暑さ対策の重要性について

倉庫や工場は、建物の構造上の問題から、作業環境が暑くなりやすいということが分かっていただけたと思います。当然、高温の作業環境になると、従業員の熱中症リスクが高くなりますし、作業効率なども低下するでしょう。また、これ以外にもさまざまな問題が発生すると考えられるため、猛暑化が進む近年では、多くの施設が夏場の暑さ対策の重要性を認識し始めています。

ここでは、倉庫・工場の暑さ対策がなぜ必要なのか、その重要性について解説します。

 

従業員の健康被害リスクを防ぐ

冒頭でご紹介しているように、職場における熱中症は、建設業や製造業、運送業などが突出して多いです。建設業については、屋外での作業となるため、熱中症リスクが高くなるのは致し方ない部分はあると思うのですが、空調設備が整えられているはずの製造業でも、非常に多くの熱中症が発生しています。

重度の熱中症は、人命にかかわる問題に発展するケースもありますし、従業員の安全や健康を守るためには、夏場の暑さ対策は非常に重要になります。

 

作業効率の低下を防ぐ

倉庫や工場での作業は、身体を使った作業になるので、作業環境が高温になれば、大量の汗をかくことになり、不快感が増す可能性があります。また、快適な作業環境と比較すると、高温化での作業はどうしても疲れやすさを感じるようになるため、不快感や疲れにより、作業への集中力が低下する可能性が高いです。その結果として、作業効率の低下や人的ミスの増加と言った問題に発展する可能性があるでしょう。

倉庫・工場の暑さ対策は、従業員が快適に作業できる環境を整え、作業効率を維持するためにも重要です。

 

製品の品質維持

倉庫や工場で取り扱う製品の中には、高温に弱く、高温環境に置いた場合、融解・変形などの問題を引き起こすものもあります。倉庫や工場内が高温状態になり、保管している商品が熱でダメになった場合、大きな損失に発展することも考えられます。したがって、暑さで変化が生じやすい製品の保管・製造を行う施設では、暑さ対策が必須です。

暑さ対策を施し、施設内の温度を適正に保つことができるようになれば、保管している製品の品質維持もしやすくなるでしょう。

 

早期の離職を防ぐ

作業環境の暑さや寒さは、そこで働く従業員にとっては、非常に重要なポイントになります。倉庫・工場内が極端に暑かったり、寒くなったりすれば、作業効率が下がる、健康被害のリスクが高くなるなどの問題に発展します。そして、従業員のモチベーション低下を招いてしまうことで、早期の離職につながるリスクが高くなります。離職率が高い職場は、新たな人材の確保も難しくなるなどのリスクが生じます。

倉庫・工場の暑さ対策は、働きやすい作業環境を提供することで、従業員のモチベーションを維持することができ、定着率を高めるためにも重要な要素になります。

 

倉庫・工場の暑さ対策に有効な方法とは?

それではここから、倉庫・工場の暑さを解消するための有効な方法をいくつかご紹介します。なお、倉庫・工場の暑さ対策では、従業員が個人的に行えるものと、施設側が対策を施すものに分けることが可能です。ここでは、それぞれの暑さ対策を簡潔にご紹介します。

 

個人で出来る暑さ対策

倉庫・工場の作業環境が高温になると分かっている場合、そこで働く従業員が事前に対策を施すことも可能です。具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • こまめな水分補給をする
    気温が上がってくると、TVのニュースなどでも「小まめな水分補給を」というフレーズが頻繁に聞こえてきます。人は、暑さを感じると汗をかくことによって体温調節を行うのですが、汗をかくことによって、体内の水分やミネラルも奪われます。したがって、熱中症などを予防するための暑さ対策として、小まめに水分補給をするという対策が非常に有効です。
  • 適切な塩分補給をする
    暑い場所で働く際は、水分だけでなく、適度な塩分補給も大切です。1リットルの水につき、食塩1g~2gが目安とされています。暑い環境で長時間作業するには、より多くの塩分を摂る必要があります。スポーツドリンクや塩分入りのタブレット、ビスケット、ゼリー飲料などでこまめに塩分補給をしましょう。
    熱中症対策におすすめ!ゼネコンがつくった4Kしおゼリー1本あたり約0.15gの塩分が配合されていますので、熱中症予防には効果的です。
    「ゼネコンがつくったしおゼリー」
  • 水分塩分補給の際に気を付ける事
    カフェインが含まれる飲料は利尿作用があるため、すでに熱中症の疑いがある場合は摂取を控えるようにしましょう。
  • 空調服を着用する
    空調服とは、作業着にファンが組み込まれていて、着衣内に空気を循環させる仕組みになっているものです。空調服は、衣服内の水蒸気密度が小さい状態に保たれ、暑さを感じにくくなるとされます。注意が必要なのは、空調服は、埃や粉塵が舞いやすくなる点です。
  • アイスベスト・クールベストを着用する
    アイスベストやクールベストは、ポケットに保冷剤を入れて使用することができる作業服です。これらは、空調服が使用できない作業環境でも役立ちます。特にインナータイプのアイスベストは、空調服と組み合わせて使用することで、体温をより効果的に下げることができます。
  • 市販の暑さ対策グッズを利用する
    猛暑化が進む近年では、清涼インナー、ネッククーラー、クールタオルなどの暑さ対策グッズが販売されるようになっています。作業を行う際に、これらの暑さ対策グッズを活用してもらうことで、体感する暑さを軽減することが可能です。
  • こまめに休憩をとる
    長時間暑い環境で作業を続ける場合、作業効率が下がり、熱中症リスクが高まるため、水分補給だけでなく適度な休憩も重要です。

作業環境に合わせて、上記のような暑さ対策を、各々の従業員に行ってもらうと良いでしょう。なお、水分補給用のドリンクや、暑さ対策グッズなどは、企業側が用意して、いつでも使えるようにしておくのがおすすめです。

 

倉庫・工場施設全体で行う暑さ対策

倉庫や工場の暑さは、建物の構造などが原因となっている場合も少なくありません。つまり、暑さの原因となっている部分を改修してあげることで、快適な作業環境を作り出すことも可能な訳です。具体的には以下のような方法が考えられます。

  • 空調設備の最適化
    どのような施設でも、適切な温度環境を維持するため、エアコンなどの空調設備が設置されているはずです。ただ、空調設備は電化製品であることから、使用していれば徐々に劣化が進行し、いずれ故障してうまく機能しなくなります。また、施設規模に見合った設備でなければ、施設内全体を冷やすことが難しいです。したがって、倉庫・工場内の温度を適切に維持するためには、空調設備部分の最適化が必要です。例えば、定期的な点検・メンテナンスや老朽化した空調設備の交換などを行うと良いでしょう。
  • 屋根の遮熱対策
    倉庫・工場の暑さは、熱が屋根から伝わってくるというのも大きな要因となります。したがって、屋根に遮熱対策を施し、熱をシャットアウトすることができれば、暑さを軽減することが可能です。例えば、遮熱塗料によって屋根塗装を行う、屋根表面や裏面に遮熱シートを設置するといった対策があります。なお、倉庫・工場の暑さ対策は、遮熱対策を施すのではなく、断熱性を高める処置を行うことも有効です。
  • 屋根を冷やす
    屋根から熱が伝わるのは、直射日光により屋根が熱せられるためです。したがって、屋根が高温にならないようにすれば、熱の伝導が少なくなるため、暑さ対策として有効です。例えば、屋根用スプリンクラーを設置し、屋根に水を流すことで屋根が高温になるのを防ぐといった対策があります。
  • 開口部を塞ぐ
    物流倉庫などは、荷物の出入りが頻繁にあることから、大きな搬入・搬出口が常に開放状態になっていることが暑さの原因になる場合が多いです。搬入・搬出口付近に間仕切りシートやカーテン、搬出入口にエアーカーテン等を設置すれば、外気の侵入を防ぎ、冷やした空気が逃げるのを防ぐことができるようになるので、有効な暑さ対策になります。
  • 業務用扇風機を導入
    倉庫内の風通しを改善する方法の一つとして、業務用扇風機の導入が考えられます。
    業務用扇風機は一般家庭用の扇風機よりも大型であり、広い敷地でも風を行き渡らせることができます。メリットとして、業務用エアコンよりも導入費用が安く、電気代も抑えられる点が挙げられます。設置工事も比較的簡単で、倉庫内の好きな場所に設置することが可能です。ただし、送風機能しかないため、倉庫内の暑さ指数を完全に下げるには業務用エアコンと組み合わせて使用することが推奨されます。
  • シーリングファンを取り付ける
    シーリングファンは天井に取り付けられる扇風機で、天井から風を送り込み、倉庫内の空気を効率的に循環させることができます。電気代が比較的安価であることがメリットですが、導入費用が高額な場合があることに留意する必要があります。
  • スポットクーラーを設置
    スポットクーラーは特定の場所を冷やす能力に優れた設備です。作業者がいる場所や、高温多湿になりやすい場所に設置することで、効率的に気温を下げることができます。室外機が不要なため設置場所の自由度が高く、効率的に使用することができますが、排熱ダクトを設置できない場合や水の交換が必要な場合があることに留意する必要があります。

倉庫・工場の暑さ対策は、上記のようにさまざまな手法が考えられます。また、施設規模や取扱製品などによって、上記以外にもさまざまな手法が考えられるので、「施設内の暑さを何とかしたい…」と考えた時には、倉庫や工場の建設実績が豊富な専門業者に相談してみると良いでしょう。

 

まとめ

今回は、倉庫・工場の暑さ対策について解説しました。年々猛暑化が進む日本では、毎年多くの人が熱中症に悩まされるようになっています。そして、職場での熱中症患者数では、建設業に次いで、製造業や運送業が多く発症しているというデータがありますので、倉庫や工場は従業員の命を守るためにも、万全の暑さ対策が求められるようになっています。

倉庫や工場は、その構造的な問題から施設内の温度が高くなりやすい面がありますので、暑さ対策が必要と考えた時には、専門業者による改修工事が有効な場合が多いです。作業環境が暑くなりすぎると、作業効率の低下や人的ミスの増加など、企業の業績を左右する問題に発展しかねないので、自社の倉庫・工場内の環境が、作業に適した状態になっているのかは毎年確認してみましょう。

 

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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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