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工場・倉庫の天井断熱のポイントと素材を紹介

2023年 RENOVATION

工場・倉庫の天井断熱のポイントと素材を紹介

天井断熱

 

今回は、工場や倉庫の天井断熱について、その基礎知識を解説します。

 

工場や倉庫の断熱リフォームは、経費削減(光熱費削減)、衛生面の改善(結露対策、カビ予防)、品質の安定(作業効率アップ)など、さまざまなメリットがあります。特に、以下のような悩みを抱えている施設では、大きな効果が見込めます。

 

  • 工場の中が夏は暑く・冬は寒く、従業員の作業効率が低下する
  • 暑さ、寒さで倉庫内の製品が傷む
  • 工場・倉庫内の室温が不安定なため、製品の保管状態が悪く、品質を安定させるのに苦労する
  • 結露が酷くカビの発生に悩んでいる
  • 結露で設備が錆さびる
  • 空調にかかる経費を削減したい

 

天井断熱を行い空調効率を改善させることで省エネ効果が得られたり、施設内の温度変化を緩和し、結露の防止やカビの発生抑制などの効果が期待できます。そこで当記事では、工場や倉庫の断熱対策について、具体的な方法や費用目安を解説します。

 

断熱補強によって期待できる効果とは?

工場や倉庫の断熱性能を向上させるメリットについて解説します。工場・倉庫の断熱補強は、空調効率を高めることで、光熱費の大幅なコストダウンが見込めるという部分が注目されがちです。しかし、それ以外にもさまざまなメリットが考えられます。

 

ここでは、工場・倉庫の断熱補強について、いくつかの視点で期待できる効果をご紹介します。

 

経費削減効果について

工場・倉庫の断熱補強は、さまざまな面で経費の削減が期待できます。例えば、以下のような効果が期待できます。

 

  • 夏の暑さや冬の寒さが軽減され、従業員が働きやすい環境を実現できる
    働きやすい環境になれば、作業効率が改善します

 

  • 建物内の室温が外気温の影響を受けにくくなる
    外気温の影響を受けにくくなるので、空調効率が改善し、空調コストを大幅に削減できます

 

このように、工場・倉庫の断熱補強は、高い経費削減効果が期待できます。なお、断熱改修工事は機械設備の追加ではないため、イニシャルコストのみでランニングコストがかからない点も魅力です。

 

衛生面の改善が期待できる

工場・倉庫の断熱補強は、施設内の衛生面にも良い影響を与えてくれます。例えば、以下のようなメリットが考えられます。

 

  • 冬の寒さや冷蔵設備による温度差から発生する結露を防止できる
  • 結露によるカビの発生を防止できる

 

以下の記事では、結露を発生させないためのポイントについて詳しく説明しております。
工場や倉庫での湿度対策とは?結露を発生させないためのポイント

 

品質の安定化が期待できる

最後は、工場で製造する製品の品質、倉庫で保管する製品の品質の安定に役立つというメリットです。

 

  • 断熱補強は、従業員が働きやすい環境を作れるため、従業員の生産環境が整えられ、製造製品の品質安定につながります
  • 断熱補強は、通年を通して安定した温度で製品の保管ができるので、保管物品の品質安定につながります

 

このように、工場・倉庫の断熱性を高めることは、コスト削減だけでなく、さまざまな面に好影響を与えてくれる可能性があります。

 

天井断熱と屋根断熱について

建物の断熱性を向上させる手法には、天井断熱と屋根断熱があります。

 

天井断熱と屋根断熱は、どちらも建物の断熱性を高めて施設内の温度環境を調整し、省エネ化を促進させるという効果を持っていますが、それぞれの施工方法は異なる部分が存在します。ここで、天井断熱と屋根断熱についてそれぞれの特徴を簡単に解説します。

 

天井断熱の特徴

天井断熱は、一般住宅などで考えると屋根断熱よりも多く採用されています。工場や倉庫については、そもそも天井が無いケースも少なくありませんので、その場合は屋根断熱が採用されます。

 

天井断熱は、天井材の上部にグラスウールやロックウールなどの断熱材を敷き詰める方法です。天井断熱は、水平面への断熱材の施工となるため、作業の難易度が低く、安価に導入できるのが特徴です。一般住宅などで天井断熱が多く採用されるのは、そのコストパフォーマンスの良さが理由だと言われています。

 

また、天井で断熱する場合、空調が必要になる空間容積が小さくなるので、空調にかかるコストを抑えられる点も人気の理由です。

 

屋根断熱の特徴

次は屋根断熱です。屋根断熱は、勾配のある屋根面に沿って断熱材を施工します。水平面に断熱材を施工する天井断熱と比較すると、断熱面積が増えることから、断熱改修工事にかかるコストが割高になる傾向があります。なお、屋根断熱には、いくつかの手法が存在します。

 

  • 天井断熱と同じようなグラスウールやロックウールなどの断熱材を屋根下地の隙間に敷き詰める
  • 屋根の下面に吹付系の断熱材を吹き付ける
  • 屋根表面を断熱や遮熱塗料で塗装する

 

天井断熱と屋根断熱は、断熱材を施工する場所の違いと考えていただければ間違いありません。屋根断熱の場合、屋根面から下の空間は、全て断熱されることになるため、空間を大きく使えるのが特徴です。

 

天井断熱と屋根断熱の性能比較について

天井断熱と屋根断熱の性能比較の観点では、施工する断熱材の種類や厚みなどによって優劣が決まるため、一概に天井断熱と屋根断熱のどちらか一方が高い性能を発揮するとは言えません。

 

断熱材の種類については、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材、ウレタンフォームやポリスチレンフォームなどの発砲プラスチック系断熱材が代表的です。一般的に、繊維系断熱材よりも発砲プラスチック系断熱材の方が断熱性は高くなります。

 

断熱材の厚みについては、繊維系、発砲プラスチック系ともに、厚ければ厚いほど性能が高くなっていきます。

 

天井断熱の利点として挙げられるのは、水平面に断熱材を施工する方法なので、断熱材に厚みを持たせることが簡単だという点です。繊維系断熱材の方が発砲プラスチック系断熱材よりも安価に断熱性を高められるため、厚みを出しやすい天井断熱は繊維系の断熱材が向いていると言えます。

 

発砲プラスチック系断熱材については、隙間なく正確に施工できるという利点があります。そのため、勾配がある屋根面でも精度の高い断熱改修が実現できるため、屋根断熱は発砲プラスチック系断熱材と相性が良いです。

 

工場・倉庫における断熱対策の具体的な方法について

それではここから、工場や倉庫における具体的な断熱対策の方法についてご紹介します。

 

断熱材の施工(天井断熱・屋根断熱)

建物の断熱対策の代表的な手法が断熱材を敷き詰めるという方法です。一般的には、屋根と天井の間(屋根裏)にグラスウールやロックウールなどの断熱材を隙間なく敷き詰めるという方法が採用される場合が多いです。ただ、工場や倉庫の場合、そもそも屋根裏が存在せず、屋根材が剥き出しになっているケースも少なくありません。この場合には、屋根材の下面に、吹付系の断熱材を吹き付けるという方法が採用される場合が多いです。

 

断熱材の施工にはさまざまな工法があるのですが、平均的なコストは1㎡あたり4,000円~8,000円程度とされています。ただし、工場や倉庫の中には、天井が非常に高く、施工のためには特殊な技術が必要になる場合があり、その場合はこれ以上のコストがかかる場合があります。

 

断熱シートを貼り付ける(天井断熱・屋根断熱)

これは、最も手軽な天井・屋根断熱の方法です。近年では、シートタイプの遮熱シートや断熱シートが開発されていて、それを屋根の表面などに張り付けることで、熱の侵入を防ぐという対策です。

 

一般的には、屋根に遮熱シートや断熱シートを貼り付ける方法が採用されるケースが多いです。ただ、遮熱シートや断熱シートは、屋根以外にも、天井用や窓用のものが開発されていて、屋内に断熱シートを貼り付けることで、空調の冷気や暖気を外に放出するのを防いでくれます。必要に応じて断熱箇所を選んで施工できるという手軽さは大きな魅力になるでしょう。

 

また、賃貸契約をしている倉庫などの場合は、貸主の承諾なしに屋根断熱工事を行うことはできません。ましてや移転の可能性がある倉庫に費用を掛けて断熱工事を検討することもないでしょう。断熱シートなら、移転先に張り替えることも可能です。ある程度の規模までですと、1~2日で工事が完了します。しかし、内側での施工になるため、作業中は倉庫内の作業を停止する必要が考えられます。

 

断熱シートや遮熱シートによる断熱対策の利点は、他の方法と比較すると、非常に安価に断熱対策が実現できる点です。断熱シートで対策を行う場合、素材そのものにかかるコストは、1㎡あたり500円~800円程度と非常に安価です。ただ、これはあくまでも材料費のみで、実際の断熱改修工事では、ここに施工費や仮設足場の設置費などが加算され、1㎡あたり3,000円~7,000円程度になるでしょう。

 


※遮熱シートや断熱シートの施工事例

 

屋根の断熱塗装(屋根断熱)

屋根断熱には、遮熱シートや断熱材と言った素材を貼り付ける方法ではなく、断熱効果を持った特殊な塗料を屋根材へ塗布することで、断熱効果を実現する方法があります。断熱塗装による断熱対策のメリットは、屋根の塗装のやり替えという意味もありますので、外観イメージの回復や雨漏り防止、防錆効果なども期待できます。

 

断熱塗料による屋根塗装については、1㎡あたり4,000円~6,000円程度が費用相場となります。断熱材の施工と比較すると、多少割安に感じるかもしれませんが、多くの塗料の耐用年数は10年前後ですので、定期的な塗替え作業のことを考えると、費用が嵩んでしまいます。

 

【番外編】太陽光発電の設置(屋根断熱)

番外編の屋根断熱として効果を期待できるのが、太陽光発電設備の設置です。屋根に太陽光パネルを設置すると、直射日光を受ける屋根材の面積が少なくなるため、一定の断熱効果を期待することができます。もちろん、太陽光パネルの設置は、『発電』が目的であり、断熱効果は付加的なメリットになります。

太陽光発電の設置は、電気料金を大幅に削減することができるほか、脱炭素経営の促進やSDGsへの取り組みなど、環境に配慮していることをアピールできるので、企業イメージの向上まで期待できる点が大きな魅力です。

 

工場や倉庫の屋根へ太陽光パネルを設置する場合のコストは、設置容量に換算して1kWあたり25.3万円が平均コストとなっています。100kW程度の容量を期待する場合の太陽光発電設備のコストで2,530万円、200kW程度を期待する大規模施設であれば5,000万円以上の設置コストになります。上述したその他の断熱対策と比較すると、莫大なコストとなりますが、電気代そのものを削減できることから、中長期的に見ると非常に魅力的な対策となるでしょう。

 

まとめ

今回は、工場や倉庫における断熱対策について解説しました。この記事でご紹介したように、工場・倉庫の断熱対策にも、天井断熱や屋根断熱などいくつかの種類が存在します。天井断熱と屋根断熱については、同じ断熱対策を考えている方も多いのですが、この二つは断熱対策を施す場所が異なり、得られる効果も異なります。

 

工場や倉庫において、天井断熱や屋根断熱により断熱効果を向上させることができれば、空調効率が改善されることでコスト削減につながるほか、従業員の作業効率が高くなる、品質の安定が容易になる、衛生面が改善されるなど、非常に多くのメリットがあります。

 

夏の暑さや冬の寒さ、結露などにお悩みの方は、建物の断熱対策を検討してみてはいかがでしょうか。

 
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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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