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工場・倉庫の換気設備の重要性と効率よく換気するポイントを解説

2023年 RENOVATION

工場・倉庫の換気設備の重要性と効率よく換気するポイントを解説

工場・倉庫の換気設備

 

今回は、工場や倉庫における換気設備の重要性と効率よく施設内の換気を行うためのポイントについて解説します。

 

工場や倉庫は、空気がこもりやすく、有害な物質が室内に留まる、施設内の気温が高くなるなどの危険があります。特に、工場の中には、製造する製品の特性上、人体に有害な物質が発生したり、製造機械が熱を発することで室内が高温になりやすい施設が存在します。当然、有害物質や高温状態を放置すれば、そこで働く従業員の健康被害を引き起こす危険がありますので、従業員が安心して働ける環境を作るためにも適切な換気を心がけなければいけません。

 

ただ、工場や倉庫は間仕切りが少ない大空間なので、その他の建築物と比較すると、換気しにくいという課題に悩む事が多いです。そこで当記事では、工場や倉庫で換気が必要な理由や、適切な換気方法を分かりやすく紹介します。

 

 

工場・倉庫で換気設備が必要な理由について

まず、工場や倉庫における『換気』の必要性について簡単に解説します。日本国内に建築される建物については、建築基準法という法律によってさまざまなルールが設けられています。室内の換気については、法第二十八条で以下のように定められています。

 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。

 別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。

引用:e-Gov|建築基準法

 

居室とは「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。」と定められていて、工場のように常に作業場として利用されている空間は居室にあたります。ただし、倉庫の場合は「非居室」とされる場合も考えられるため、この場合は建築基準法上の換気設備の設置は不要という判断になります。しかし、実際に営業用倉庫の運用を考えた場合には、倉庫内では多くの従業員が作業に従事することになりますし、保管物品の品質を保つためには適切な換気設備の設置が重要とされています。

 

工場や倉庫において、換気設備の設置が重要とされるのは、以下のような理由があるからです。

 

 

①有害物質による健康被害や商品劣化を防止するため

工場や倉庫で換気が必要な一つ目の理由が、施設内で働く従業員の健康を守ることと施設内で保管している製品の品質を守ることです。

 

例えば、工場の中には、作業内容や取り扱う製品によって、人体に有害な物質が発生することも少なくありません。また、どのような施設でも、湿気によるカビの発生やホコリの蓄積などと言った問題は必ず発生します。

 

そして、発生した有害物質やカビ、ホコリは空気中を漂うことになるので、適切な換気が行われず、有害物質を含む空気が室内にとどまった場合、そこで働く従業員の健康被害や、製品への異物混入など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。

 

したがって、工場や倉庫では、適切な換気を行い、空気の入れ替えを行うことが重要視されています。

 

 

②適切な温度管理による熱中症対策のため

工場や倉庫では、適切な温度管理を行うことにより、従業員を熱中症から守る目的で適切な換気が必要とされています。

 

工場や倉庫は、ひらけた土地に建設されることが多く、日陰が少なくなるため、屋根が直射日光を受け続け、その熱が室内に伝わることで室温が高くなることがあります。また、製造する製品によっては、機械・設備が作動する時の熱がこもるため、室温が高くなってしまうことが考えられます。熱がこもり、高温状態の室内で従業員が働いていると、作業効率が下がるだけでなく、熱中症などの健康被害を引き起こす危険が生じます。

 

適切な換気が行うことで、室内に溜まった熱を効率的に排出することができ、室温の管理がしやすくなります。つまり、換気設備は、従業員が健康で効率よく働くために必要とされているわけです。

 

 

③感染症予防のため

工場や倉庫は、空間が広く、室内の空気全体の入れ替えが難しいため、新型コロナウイルス感染症などの感染症拡大リスクが高いと言われています。したがって、工場や倉庫での環境は、密閉状態を作らず、適度な換気が行える換気設備は非常に重要な役割を担っています。

 

ちなみに、従来の建築基準法では、建物内の換気について「1時間の必要換気量が20立方メートル」と定められていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、厚生労働省より「1時間で必要な換気量は30立方メートルが推奨」と変更されています。

 

新型コロナウイルス感染症のような、空気感染を引き起こす感染症対策では、適切な換気が重要とされています。

 

参考資料:厚生労働省資料より

 

 

工場・倉庫内を換気するのが難しい理由

ここまでの内容で、工場や倉庫にとって、効率的な換気がどれほど重要かが分かっていただけたと思います。ただ、「工場や倉庫でも、窓を開けて、適当に換気扇をつけておけば換気はされる」と考えている方もいるかもしれませんが、。実は、工場や倉庫など、大きな空間の場合、換気するのは皆さんが考えているほど簡単なことではありません。

 

例えば、一般的なオフィスビルなどであれば、部屋が細かく間仕切りされていて、天井もさほど高くありません。窓や換気扇から壁までの距離も、比較的近いので、窓を開けたり、換気扇をつけたりすれば、短時間で簡単に空気の入れ替えが可能です。これは、オフィスビルの各居室が、空間が狭く空気量が少ないのが理由です。

 

それでは、工場や倉庫はどうでしょうか?工場や倉庫は、一般的なオフィスと比較すれば、天井が圧倒的に高く、さらに間仕切りが無いため、その空間は比べ物にならないほど広いです。工場や倉庫は、中心から各壁までの距離も長いので、壁や天井に換気扇が取り付けられていても、全体を換気するにはかなりの時間がかかってしまいます。特に注意が必要なのは、空間が広い工場や倉庫では、換気扇や窓がついている壁付近だけが換気される「ショートサーキット」という現象が起こりやすく、施設の中心部分の空気がよどんでしまうというケースがあります。換気は、工場・倉庫内全体が隅々まで換気できてこそ意味があるので、ショートサーキットが起こるような施設はとても換気ができているとは言えません。

 

この他にも、換気設備が取り付けられていても、その設備が老朽化して十分な換気ができていない、工場や倉庫内の設備や保管物品などの関係で、効率的な換気が妨げられるといったケースも考えられるので注意しましょう。

 

 

工場・倉庫内を換気する方法とは

上述のように、工場や倉庫など、天井が高くスペースが広い施設は、換気するのが難しい施設ではあるのですが、次のような方法で室内全体の換気が行われています。

 

  • 窓やドアの開放

  • シーリングファン

  • エアー搬送ファン

  • 換気ダクト

  • 大型送風機

  • 有圧換気扇

 

工場や倉庫での換気方法は、施設のサイズや保管する商品の種類、周辺の環境などによって、適している場合と適さない場合があるので注意が必要です。

 

例えば、窓やドアなどの開口部を開放して喚起する方法は、特別な設備を導入しなくても換気できるという手軽さがあります。しかしその一方で、ほこりや虫などが入る恐れがありますので、これらの侵入を避けたい食品や精密機器の製造・保管をする工場や倉庫では実施できない換気方法と言えます。

 

このほかにも、天井に設置するシーリングファンは低層の空気が循環しにくい、換気ダクトは広い空間の換気には向かないなど、それぞれに課題が存在しますので、自社の工場・倉庫に適切な換気方法がどれなのかは、専門家に相談すると良いでしょう。

 

 

換気の効率を上げるためのイント

それでは最後に、工場や倉庫において、効率的に換気をするにはどうすればよいのかについて解説します。効率的な換気は、以下がポイントとなります。

 

  • 空気の流れを考える
    開口部を開放して換気する場合は、建物の2方向を開けて空気が流れるようにすることが、換気効率を上げるポイントです。また、換気設備を用いる場合、設備の設置場所が重要です。換気設備をどこに設置するのかだけでなく、保管商品や棚、製造設備が空気の流れを遮らないようすることが、スムーズな換気を実現するためのポイントです。
  • 空気の流れをつくる
    換気効率を高めるためには、強制的に空気の流れを作ってあげることが大切です。自然風による換気の場合、無風の日は換気効率が落ちますし、シーリングファンを利用する場合も、低層の空気が動かないという課題が存在します。したがって、吸気と排気のファンを設ける、誘引ファンで空気の流れを助けるなど、空気を強制的に動かすことが効率的な換気にとって大切です。
  • 実績のある業者に相談する
    工場や倉庫は、一般的な建物と異なる部分がかなり多くあるため、工場・倉庫の実績を豊富に持つ業者に相談する必要があります。効率的な換気設定は、工場や倉庫などの大空間における換気についての経験やノウハウの積み重ねが必要です。工場や倉庫の建設において実績のある業者であれば、大空間における空気の流れもきちんと計算して換気計画を行ってくれますので、そういった業者を選定するようにしましょう。

 

 

まとめ

今回は、工場や倉庫における換気について解説しました。換気とは「室内の汚れた空気を室外の新鮮な空気に入れ替え、循環させること」を指しているのですが、換気については「特別な対策などなくても、換気扇や窓の開放をすれば勝手にされる」と考えている方が多いです。確かに、一般の住宅やオフィスなど、空間がそこまで大きくない場所なら、窓を開放し換気扇をつけておけば短期間に室内の空気を入れ替えることが可能です。

 

しかし、工場や倉庫のように、非常に広大な空間を持つ場所は、簡単に換気することができません。特に、大量の荷物を保管するため棚が設置されている大規模倉庫などは、棚が空気の流れを遮り換気の邪魔をするなど、皆さんが考えている以上に室内の空気がよどんでしまう可能性があります。工場に関しては製造している製品に応じて衛生管理の必要もあるため、倉庫と比較するとより、慎重な検討が必要です。

 

工場や倉庫での適切な換気は、従業員が安全で快適に働く環境を作る、製造・保管する製品の品質を守るためにも重要なので、「換気」問題にお悩みの方は工場・倉庫の建設実績豊富な三和建設に是非ご相談ください。食品工場や医薬品倉庫など高い基準の衛生管理や品質管理が必要な建物も自信をもって対応いたします。

 

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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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