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スレート屋根の倉庫リフォームを検討する際に注意すべきアスベスト

2022年 RENOVATION

スレート屋根の倉庫リフォームを検討する際に注意すべきアスベスト

 

今回は、築年数がある程度経過している倉庫について、解体などを含む大規模リフォーム工事を検討する場合の注意点をご紹介します。

 

それなりに築年数が経過した倉庫については、外壁や屋根材として波型スレートが採用されているケースが多いです。波型スレートは、価格が安い割に耐久性があり、耐火性や遮音性にも優れているという特徴を持っていることから、施設規模が大きい倉庫や工場などでは非常に重宝される建材となります。しかし、2006年以前に建設された倉庫の場合、屋根材として採用されているスレート材にアスベストが含まれている可能性があり、リフォーム工事などを行う際には、細心の注意を払わなければいけません。特に、令和4年4月からは、『石綿の事前調査結果の報告制度』がスタートとなりますので、リフォーム工事に関わる手順などに変化が生じてしまうと言われています。なお、この新たな制度については、環境省・厚生労働省から以下のようなコメントが発せられています。

 

令和4年4月1日から、建築物等の解体・改修工事を行う施工業者は、大気汚染防止法に基づき当該工事における石綿含有建材の有無の事前調査結果を都道府県等に報告することが義務づけられます。報告は、厚生労働省が所管する石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署にも行う必要があります。

 

この報告は、原則として電子システム「石綿事前調査結果報告システム」から行っていただきます。パソコン、タブレット、スマートフォンから24時間オンラインで行うことができ、1回の操作で都道府県等と労働基準監督署の両方に報告することができます。

 

引用:環境省「報道発表資料」より

 

この記事では、波型スレートを採用している倉庫について、どのような屋根リフォーム手段があるのか、実際にリフォーム工事を検討した時の注意点をご紹介します。

 

 

波型スレートのリフォーム手段について

それではまず、波型スレートを採用している倉庫について、どのようなリフォーム手段が存在するのかについて解説しておきましょう。安価な割に耐久性が高いと言われる波型スレートですが、表面に施されている塗膜などが劣化してしまうと、防水性が失われてしまいます。また、適切なメンテナンスを行っていたとしても、一般的な耐用年数が約25年と言われていますので、いずれ大規模な屋根リフォームをしなければならない時がやってくると考えておかなければいけません。

 

なお、波型スレートの代表的なリフォーム手段は、以下の3つになりますので、屋根材の状態によって最適なリフォーム手段を選択してください。

 

 

①塗装工事

波型スレートのリフォーム手段として、屋根塗装と言う方法があります。これは、屋根全体をもう一度塗装する工事となります。

 

屋根は、屋根材そのものが雨水などを防いでいるというイメージを持たれているのですが、スレート屋根については、屋根材自体に防水効果などはなく、表面に施されている塗装によって各種機能を得ています。つまり、経年劣化などで塗膜の効果が薄れてしまうと、屋根材自身が水分を吸収するようになり、湿潤・乾燥を繰り返すことで、ひび割れが生じ、雨漏りなどに発展してしまう恐れがあります。

 

こういったことから、塗膜の効果が完全に失われてしまう前に、改めて塗料を塗ることで、本来の屋根機能を維持するという目的で屋根塗装が行われます。特に、ボルトで固定するタイプの屋根の場合、ボルトが発錆することで、ボルト周りに隙間が生じたり、ひび割れが生じてしまうことで雨漏りに発展するケースがあります。適切なタイミングで屋根塗装を行っておけば、こういった雨漏りリスクも防ぐことが可能です。

 

なお、近年では塗料の機能性が飛躍的に進化しており、採用することで屋根に遮熱効果や断熱効果をもたらせてくれるような高機能性塗料が多く登場しています。したがって、近年の屋根塗装工事は、単に施設の美観維持や雨漏り防止目的だけでなく、施設に新たな機能を付加する目的で行われることも増えています。

 

②カバー工事

二つ目の手段はカバー工法と呼ばれるリフォーム手段です。これは、既存屋根の上から、新しい屋根を葺いていくという手法になります。完成後の屋根は、2重屋根の状態になりますので、重ね葺き工法とも呼ばれます。

 

カバー工法は、下で紹介する葺き替え工事と異なり、既存屋根材を撤去する工程が必要ありません。そのため、本来、撤去工事にかかる日数分、工期を短縮することができ、さらに廃材が出ないことから処分費がかからないなどと言う理由から、葺き替え工事と比較すればかなりコストを抑えることが可能です。

 

なお、工事後の屋根が二重状態になることから、屋根の重量が重たくなってしまいます。そのため、「建物の耐震性に問題はないのか?」と不安に思ってしまう方がいるかもしれません。この点については、新たに採用する屋根材について、非常に軽量な金属屋根素材にすることで、大きな影響が出ないと言われています。そして、屋根が二重になることで、屋根の断熱性向上や遮音性向上などの効果が得られます。但し、構造検証を必ず行う必要があります。

 

 

③葺き替え工事

最後は葺き替え工事です。これは、古くなった屋根を取り除き、屋根下地などから新しい屋根に取り換えるという工事になります。

 

この工法は、既存屋根の状態が著しく悪くなっていたり、構造上の問題でカバー工法などでは対応できない…といったケースで、最後の手段として選ばれる感じです。というのも、葺き替え工事の場合、既存屋根を一旦取り除いてしまうという工程があることから、一時的に屋根が無い状態になり、生産活動を止めなくてはいけなくなってしまう可能性があるからです。こういった理由から、倉庫や工場などの施設では、葺き替えでなくカバー工法が採用できるうちに屋根リフォームを行うケースが多いです。

 

石綿の事前調査結果の報告制度について

ここまでで、倉庫などでよく採用されている波型スレートのリフォーム手法について分かっていただけたと思います。波型スレートを採用している倉庫について、屋根リフォームを検討した場合には、屋根の状態によって上記の3種類の中から適切な手段を選択しなければいけません。

 

ただ注意しておかなければならないのは、2006年以前に建設された倉庫などの場合、建物にアスベスト(石綿)が採用されている可能性があるという点です。現在では、アスベストが人体に有害であるということが広く知れ渡っていますので、全面的に禁止されているのですが、「アスベストが有害」だという事実が知れ渡るまでは、非常に便利な建材としてさまざまな建物に使用されていました。そして、アスベストが使用されている建物について、解体などを伴う工事を行う場合、工事によってアスベストが飛散する恐れがあるため、有資格者による工事が必要になります。さらに、令和4年4月1日以降、『石綿の事前調査結果の報告制度』がスタートとなりますので、アスベストが含まれた建物の工事は、より工事の工程が複雑になっています。

 

ここでは、新たにスタートした、『石綿の事前調査結果の報告制度』についても簡単に解説しておきます。

 

 

事前調査結果の報告が必要な工事

令和4年4月1日以降に工事に着手するもので、以下の条件に該当する場合、石綿の事前調査結果の報告対象となります。

 

  • 建築物の解体工事(解体作業対象の床面積の合計80 ㎡以上)
  • 建築物の改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))
  • 工作物の解体・改修工事(請負代金の合計額100万円以上(税込))

 

引用:環境省サイトより

 

上記に該当する場合、目視による調査などにより、アスベストの有無を確認し、事前調査結果を労働基準監督署に電子届出を出さなければいけないとされています。この制度の詳細については、環境省の資料で確認しておきましょう。

 

環境省「(石綿)事前調査結果の報告について」
環境省資料

 

なお、アスベストが含有されているスレート屋根のリフォーム工事でも、屋根塗装やカバー工法など、アスベストを含む既存材料に損傷を及ぼさない施工方法であれば、作業記録などは不要とされています。

 

 

まとめ

今回は、波型スレートを採用している倉庫などにおけるリフォーム工事の注意点をご紹介してきました。この記事でご紹介したように、倉庫や工場などの規模の大きな施設では、安価な割に耐久性が高いという特徴を持つ、スレート材が人気です。ただ、2006年以前に建設された建物の場合、使用している建材にアスベストが含有されている可能性があるということを頭に入れておいた方が良いでしょう。

 

アスベストは、その昔「奇跡の鉱物」と呼ばれていて、産業の発展に多大な貢献をもたらせたと言われる素材です。そのため、非常に多岐にわたる建材などに採用されていて、築年数が経過した古い建物であれば、アスベストが含有されている建材が採用されていても何らおかしくありません。しかし、アスベストの発がん性など、人体への危険性が認識されるようになってから、徐々に規制されるようになり、2006(平成18年)の労働安全衛生法施行令改正により、「アスベストの含有量が重量の0.1%を越えるものの製造、輸入、譲渡、提供、使用」が完全に禁止されています。つまり、これ以降に建設された建物などであれば、アスベストの心配は基本的にしなくても良いでしょう。

 

なお、この記事では、屋根のリフォームを中心にご紹介していますが、アスベストが存在し得る場所は他にもたくさん存在します。例えば、外壁材や内装材、内壁の吹き付け材や配管の断熱材など、アスベストはさまざまな場所に採用されてきましたので、こういった部分のリフォームにも注意しておきましょう。

 

今回の法改正により、アスベストの有無を工事前に事前調査で確認する必要が生じたため、2006年以前に建設された倉庫などは、リフォーム工事の予算などの計画に影響が出るのを防ぐ為にも、早めに専門業者に相談するのがオススメです。

 

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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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