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工場の騒音対策!騒音規制法を基に対策を紹介

2023年 RENOVATION

工場の騒音対策!騒音規制法を基に対策を紹介

工場の騒音対策
 

企業が工場を運営するうえで、決して切り離すことができないテーマの一つが『騒音対策』です。工場を運営していて、近隣から受ける苦情の代表が「騒音」に関するものと言われています。

全国の地方公共団体が受理する騒音苦情については、年間1.5万件前後を推移していましたが、令和2年度には約30年ぶりに2万件を超える騒音苦情が記録されています。これは、コロナ過で自宅にいる時間が長くなり、これまで気にならなかった騒音が気になるようになったなどの背景が考えられます。令和3年度は、19,700件の騒音苦情が受理されており、その中でも工場・事業所が関係する騒音は約5,500件(全体の27%程度)となっています。

工場では大型車両が頻繁に出入りすることや、製品を製造するための大型工作機の稼働が欠かせないことから「ある程度の騒音が生じるのは致し方ない…」と考えてしまいがちです。しかし、騒音は環境基本法で「典型7公害」の一つに指定されているほか、騒音規制法という法律で騒音を生じさせる事業者が守るべき指標が設けられています。
そこで当記事では、工場の騒音対策について、これに関係する法律と具体的にどのような対策を行えば良いのかについて解説します。

参照:令和3年度騒音規制法等施行状況調査の結果について

 

騒音を規制する基準について

工場などから生じる騒音については、環境基本法に基づいた環境基準と騒音規制法によりその規制基準が決められています。工場の騒音対策を行う場合、まずは自社が守らなければならない指標を確認しましょう。

 

環境基準

騒音に関する環境基準は、環境基本法に基づいて、政府が定めた行政上の目標です。工場騒音などが関わる環境基準は、下図のようになっています。

 
騒音に関する環境基準
画像引用:環境省サイトより
 
騒音の基準値は、40デシベル以下〜60デシベル以下までの間で、時間帯や地域特性によって分かれ、都道府県知事(市の区域内の地域については、市長)が指定しています。地域の類型や時間の区分については、上図の通りです。

 

騒音規制法

騒音規制法は、環境省所轄の法律で、以下の目的で制定されました。

(目的)
第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴って発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
引用:e-Gov|騒音規制法

騒音規制法は、騒音の許容限度を定め、工場や建設作業場、道路などの周辺で生活をする人の生活環境の保全や健康を守ることが目的です。したがって、作業に著しい騒音が伴う施設などは、市町村長や特別区長に届出をする義務があると定められています。また、工場の周辺住民などから騒音に関する相談や苦情を受けた際には、騒音規制法が対応の際の基準に用いられることになります。騒音の苦情があった際、騒音が騒音規制法に定められた許容限度を超えていると判断される場合は、工場や事業所に対して改善要請などが行われます。

 

騒音規制法と工場の関係性

ここからは、工場を運営するうえで、騒音規制法によってどのような規制を受けるのかをもう少し詳しく解説します。

 

騒音規制法の対象範囲

騒音規制法の対象範囲は、環境大臣や環境省令などによって定められており、工場と事業所、建設作業、自動車のそれぞれについて詳細が決められています。また、騒音の大きさだけでなく、立地する地域ごとに区分されており、各区域の状況によって騒音値の許容限度が定められています。

区域については、都道府県の知事や市町村長が指定することになっており、工場と事業場の対象範囲は以下の4つに分けられています。
 

  • 第一種区域:良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域
  • 第二種区域:住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域
  • 第三種区域:住居の用にあわせて商業、工業等の用に供されている区域であつて、その区域内の住民の生活環境を保全するため、騒音の発生を防止する必要がある区域
  • 第四種区域:主として工業等の用に供されている区域であつて、その区域内の住民の生活環境を悪化させないため、著しい騒音の発生を防止する必要がある区域

上記の各区域によって、規制範囲となる騒音値が細かく定められています。

参照:特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準

騒音規制法における特定施設

騒音規制法における特定施設は、以下のように大きく11種類に分けられています。

  • 金属加工機械
  • 空気圧縮機(一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして環境大臣が指定するものを除き、原動機の定格出力が7.5kW以上のものに限る。)・送風機(原動機の定格出力が7.5kW以上)
  • 土石用または鉱物用の 破砕機・摩砕機・ふるい・分級機(原動機の定格出力が7.5kW以上)
  • 織機(原動機を用いるもの)
  • 建設用資材製造機械
  • 穀物用製粉機(ロール式で原動機の定格出力が7.5kW以上)
  • 木材加工機械
  • 抄紙機
  • 印刷機械(原動機を用いるもの)
  • 合成樹脂用射出成形機
  • 鋳型造型機(ジョルト式)

参照:東京都環境局「騒音規制法の特定施設」
 
上記の施設が設置してある場合、特定工場となり、下図のように騒音値の許容限度が決められます。
 
騒音値の許容限度
画像引用:環境省サイトより
 
特定工場の騒音値の許容限度は上図のように定められています。なお、第2~4種区域内において、工場の周囲50m(およそ)以内に学校や図書館、病院などがある場合、都道府県知事や市町村長により上図の数値よりも5dB減らすことが可能とされています。
 

工場の騒音対策について

作業に大きな騒音が伴うような工場は、近隣住民の生活環境や健康を保全するため、何らかの騒音対策が必要になります。ここでは、工場の騒音対策について、どのような順序で行えば良いのか、また具体的に何を行えば騒音を抑えられるのかについて解説します。
 

騒音対策の手順について

まずは、工場で騒音対策を行う場合の手順について解説します。騒音対策は、次の手順で行っていきましょう。

 

STEP1 現状把握

騒音対策の第一歩は、現状を正確に把握することです。工場を稼働させた時、機械や設備の振動や音域、騒音の大きさなどを分析しましょう。工場の騒音対策は、騒音の発生原因や状況を確認し、問題を特定したうえで適切な対処を検討することが重要です。例えば、騒音問題が人の耳には聞こえにくい低周波音が原因となっている場合もあり、一般的な防音対策では苦情が収まらないケースもあります。自社の人員だけでは、原因の特定や対応策の考案が難しい場合、専門業者に相談することも検討しましょう。

 

STEP2 対策方法の決定

正確な現状把握ができれば、適切な対応策の検討・決定を行います。(具体的な方法は後述)防音対策は「遮音・吸音・防振」などの選択肢から適切な方法を選ぶのが一般的です。なお、防音対策と聞くと、現状の施設に音漏れしにくくなるような対策を施すことをイメージする方が多いのですが、音の発生源となる機械・設備を、騒音の少ないものに交換することも防音対策です。

 

STEP3 防音対策を実施

STEP2で決めた防音対策を実際に実施します。防音対策については、専門業者に外注するケースがほとんどですので、業者選びは慎重に行いましょう。例えば、工場の防音対策では、工場の稼働をストップさせると売り上げの低下に直結しますので、可能な限り短時間で対策を行う、もしくは工場の稼働をストップさせることなく対策を施すことができないか確認しましょう。工場などの防音対策は、防音工事に関する知識だけでなく、工場などの特殊な施設の施工実績も重要になります。

 

STEP4 効果測定と改善

防音対策が完了したら、きちんと測定器などを使用して、どれほどの効果が得られたのか確認する必要があります。施工前と比較して効果が確認できた場合は良いのですが、効果が十分でない場合、STEP1に戻り対策をやり直す必要があります。

工場の防音対策は、基本的に上記のようにPDCAを回すことで改善を行います。

 

対策すべき騒音の種類について

それでは次に、工場で発生する騒音について、どのような音が問題となるのかを解説します。

 

①機械・設備による騒音

「工場の騒音」と聞いて最もイメージしやすい騒音が、工作機械などが作動する時に生じる大きな音です。上記で紹介した騒音規制法では、著しい騒音を発生させる設備として11種類の施設が指定されていて、これが設置されている工場は機械・設備から生じる騒音に注意する必要があります。

 

②作業で発生する音

①で紹介した機械・設備の他にも、人による作業や工具の使用などによって生じる音が騒音になるケースがあります。例えば、金属を叩く音、グラインダーで研磨・切削する音、電動工具などのモーター音などが該当します。
一般的に、音が発生する作業や工具の使用は屋内で行うことが想定されます。しかし、街中にある自動車整備工場などは、大きな出入口があり半屋外と言えるような場所になっていて、屋外で大きな音を出しているのと大差がないケースがあります。音が外部に漏れやすい構造になっている工場は、作業により発生する騒音に注意しましょう。

 

③車両のエンジン音

工場では、大型車両が頻繁に出入りすることから、車のエンジン音が騒音になる場合があります。他にも、工場内でフォークリフトを使用する場合、エンジン音以外にもブザーやアラーム音が騒音になるケースがあります。
特に、待機中のトラックがエンジンをかけっぱなしにしている場合は、苦情が出る可能性が高いです。

 

④人の声

工場に対する騒音の苦情には、作業中や休憩中の従業員の声なども含まれています。工場によっては、屋外で作業を行うケースもあり、確認や打ち合わせの声が騒音になるケースがあるようです。この他にも、屋外に喫煙スペースを設けている場合、歓談する声などに対して騒音の苦情が出るケースもあるようです。
人の声なので、音量としては大したことはないのですが、住宅地にある工場などは注意が必要です。人によっては、無機質な機械音よりも話し声の方が気が散るため騒音に感じるという方もいるようです。

 

具体的な騒音対策について

それでは最後に、工場の具体的な騒音対策についてご紹介します。

 

遮音する

「遮音」とは、文字通り、音を跳ね返して外に漏れるのを防ぐことを指しています。一般的に、遮音対策は、空気の振動で伝わる空気音対策に有効とされています。

工場の騒音対策では、壁や天井、床などに対して、遮音シートや防音マットなどを施工する方法が考えられます。ただ、この方法は、外に音が漏れにくくなるのは確かなのですが、室内で音が反響するようになるというデメリットがあります。したがって、音の発生源となる機械・設備などを遮音材で囲むという方法が採用される場合が多いです。これであれば、工場内が静かになると共に、施工範囲が小規模なので低コストで防音対策が実現します。

ちなみに、音が生じる作業を行う時は、窓やドアをきちんと閉め切るといった対応も防音に効果的です。非常にシンプルな対策ですが、空間を遮断することは、それだけである程度の防音効果を見込むことができます。

 

吸音する

吸音は、音を吸収することで、騒音対策においては効果的な対策の一つとなります。

吸音対策では、ウレタン、グラスウールなど、多孔質材料が採用されます。例えば、壁の中にグラスウールを充填することで、壁の吸音性を高めるとか、ダクトにロールタイプの吸音材を巻くといった対策に採用されます。なお、パーテーションやパネルタイプの製品もあり、大きな音が生じる機械の周りを吸音パーテーションで囲んで、音を軽減するといった対策が施される場合もあります。

吸音材は、遮音材と組み合わせて利用されることが多く、遮音材による反響を吸音材で抑えることができるため、防音効果の向上と音響の調整が期待できます。

 

防振する

工場の機械・設備の防音対策では、「防振」が採用されることが多いです。防振は、振動を吸収することを意味しており、固体音の対策として効果的です。

例えば、振動が発生する機械・設備の下に防振シートなどを敷き、振動が伝わるのを防ぐという方法が一般的な防振対策です。防振材には、ゴムやシリコン、ウレタンなどが主に採用されていて、一般住宅でも、エアコンの室外機や洗濯機の振動音による騒音を防ぐために採用されているケースが多いです。

なお、工場で防振対策を行う場合、設置する場所の環境条件や機械の特性に注意する必要があります。例えば、高温になる場所であれば、ウレタンやゴムは不向きで、シリコンが適しています。

 

騒音の発生源を断つ

問題となっている騒音によっては、発生源そのものを断って音を出さないようにするという方法も考えられます。具体的には、「音の出ない方法で作業する」「音の出ない設備に交換する」と言った対策が考えられます。
この他にも、待機中のトラックのエンジン音が問題となっている場合、小まめにエンジンを切るというルールを作るなど、音の発生源を断つという方法もあります。

 

稼働・作業の時間帯を変更

工場など、事業所の防音対策では、騒音の原因となる作業について、時間帯を変更するという対策も有効です。工場の中には、稼働に大きな音が生じる機械の使用が必要不可欠の場合もあるのですが、この場合、その機械を使用した作業の時間を見直すだけで、近隣への騒音による影響を軽減できる場合があります。

例えば、騒音が発生する作業について、朝・夕に行うのではなく日中に集中的に行うなどの対策が考えられます。

 

まとめ

今回は、工場で生じる騒音について、何が原因で騒音が発生するのか、また近隣の住環境を保全するためにはどのような対策を行えば良いのかについて解説しました。

工場は、大型車両の出入りが多い、製造する製品によっては作業に大きな音を伴ってしまうという問題があり、全国の地方公共団体が受理する騒音苦情の中でも、建設工事に続いて第二位の割合を占めています。工場側から見ると、「製品を製造するためには、どうしても音は生じてしまうのだから多少は我慢してほしい」などと考えるかもしれません。しかし、騒音に関しては、環境基本法に基づいた環境基準や、騒音規制法による騒音の上限値が定められているため、基準を超えるレベルの騒音が発生する場合、それを抑えるための対策を施さなければいけません。

記事内では、工場から出る騒音を抑えるための防音対策についてもご紹介していますので、是非参考にしてみてください。

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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