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工場に必要なBCP対策とは?どこから手を付けるべきか

2021年 RENOVATION

工場に必要なBCP対策とは?どこから手を付けるべきか

 

 

日本は、古くから地震や台風などの自然災害が多い国として有名です。近年では、夏場の集中豪雨による水害が頻発し、企業規模に関わらず自然災害への備えが非常に重要視されています。さらに、2020年に入ると、新型コロナウイルス感染症の影響が日本全国に拡大し、新型コロナウイルスの発生から1年半以上が経過した現在でも経済活動が大きく制限されているなど、感染症拡大によるさまざまなリスクが顕在化しています。
このような中、企業にとって脅威となるさまざまな緊急事態が発生した際、企業が事業の継続や早期復旧を行うためにも『BCP(Business Continuity Plan)の策定』に対する重要性がこれまで以上に高まっています。特に、日本国内では、大企業の約三割はBCPの策定が完了していますが、中小企業ではまだ1割強しか策定ができていない(2020年5月時点)という調査データもあるなど、中小企業にとっては急務の問題となっていることでしょう。 そこでこの記事では、製造業の中小企業に必要なBCP対策について解説します。

参照データ:帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年)」 > BCP対策の基礎知識はFact ismの記事をご参照ください
 

 

 

中小の製造業に必要なBCP対策とは?

BCPとは、「Business Continuity Plan」の略語で、日本語に直訳すると『事業継続計画』となります。上述したように、日本は地震や台風、集中豪雨などによる水害など、諸外国と比較しても自然災害の発生数が非常に多い国として有名です。さらに2020年からは、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の制限があったなど、誰にも予想できないような危機的事態がいつ発生してもおかしくない国と言えます。BCPは、こういった事態が発生した時でも、重要業務が中断しないこと、また万一中断したとしても速やかに復旧させるため、平時に行っておくべき活動や非常時に取るべき対策をまとめた計画を指します。

製造業にとって、地震や豪雨災害、感染症の拡大は、事業に非常に大きな影響を与える脅威となります。例えば、地震や河川の氾濫などで製造ラインにダメージが生じると、操業停止を余儀なくされるケースもあり、企業にとって大きな損害となります。さらに、大企業のように複数の拠点があるわけではない中小企業では、リスクを分散することが難しく、一時的な操業停止が経営に非常に大きなインパクトを与える危険もあるでしょう。

つまり、自然災害だけでなく、感染症問題など、さまざまな危機が起こりうるとわかった今、中小企業にとっても幅広いリスクを想定したBCP対策の策定が求められています。

 

工場のBCP策定はどこに注目すべき?

それでは、中小規模の工場などがBCPを策定する場合に注目しておきたいポイントをご紹介します。

 

①従業員の安全確保について

緊急時に、事業の復旧や継続を進めるうえで欠かせないのが、従業員の安全を確保することです。

事業の継続や再開に向けた体制を早期に整えるためには、何より従業員の身を守り、安全を確保することが重要ですので、安否確認は最優先で取り組む事項だと考えてください。
安否確認の手法については、私用の携帯電話にメールなどを送信する安否確認システムや、SNSなどを活用した方法、GPSなど位置確認ツールを活用する方法などがあります。大規模災害が発生した際は、携帯電話がつながりにくくなりますので、その点も考慮して自社に合った安否確認方法を定め、周知しておきましょう。

 

②防災対策や訓練の実施

災害が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるためには、施設自体の防災対策が非常に重要です。例えば、事業所や工場について、建物の耐震措置や必要な防災設備の導入などを進めておきましょう。
なお、製造業でのBCP対策としては、太陽光発電などの自家発電設備と蓄電システムの導入なども検討すべきです。こういった設備が整っていれば、非常時に電力会社からの電力供給がストップしても、最低限の生産性を維持することができるようになります。

また、緊急事態が発生した時に、従業員が安全に避難できるよう、定期的に避難訓練などを行うことも大切です。上述したように、従業員の安全確保は事業の継続や早期復旧に欠かすことができません。

 

③継続する重要業務を選定

BCP策定の中でも特に重要なのが、非常時に継続する事業を選定することです、内閣府の防災ページでも、「災害時に特定された重要業務が中断しないこと」としているように、災害などで緊急事態が発生した際に、最優先に継続・復旧する業務を定めておく必要があります。

これは、災害が発生した際、業務ができる従業員の数や、調達できる部品、資金などに制限がかかる可能性が考えられるため、自社が優先すべき業務をあらかじめ選定しておき、バックアップシステムなどを整備しておく必要があるからです。なお、優先する業務については、売上高や利益率だけで考えるのではなく、納入する取引先の優先度など、経営や将来性に関わる要素を総合的に検討して判断しなければいけません。

参照:内閣府「防災情報のページ

 

④代替設備の確保

自然災害による被害を受けた時には、建物自体にダメージがなくても、工場内の設備が破損してしまうことも考えられます。そのため、万一に備えて、代わりに製造を行える設備を準備しておくことも大切です。

ただし、非常時のためだけに多額のコストをかけて代替設備を用意することが難しい場合もあると思います。このような場合は、保有している他の設備で代用できないか、緊急時のことを想定して検討しておきましょう。さらに、新たな設備を導入する際には、転用の可能性なども考慮しながら選別すると良いと思います。

他には、災害により不具合が発生した場合、迅速に設備の整備が行える体制を整え、非常時に設備を借りることができるように、他社と協力体制を構築しておくなどの対策も有効です。

 

⑤代替工場の確保

建物の耐震工事など、万全な防災対策をとっていたとしても、工場が被災して操業できなくなってしまうリスクはあります。

したがって、万一工場機能が停止してしまったら、ということも想定し、事業を継続または早期復旧を行える代替拠点を確保しておくことが大切です。例えば、「緊急時には自社内の別の建物を生産拠点にする」、「緊急時はお互いが支援しあう協定を他社と結ぶ」など、生産拠点の代わりとなる場所を用意しておくべきです。

なお、大規模地震など、ある程度被害範囲が限定される自然災害に備えることを考えた場合、「1箇所の工場が損害を受けても、別の工場で事業を継続できる」と言った体制を作るため、生産拠点を分散しておくことも有効です。

 

⑥取引先も分散

生産拠点だけでなく、重要業務を継続していくために必要になる原材料についても、在庫の保管先や仕入れ先を分散することがBCPとして有効です。

例えば、保管拠点を分散しておけば、1箇所が被災したとしても事業を継続するために原材料を供給し続けることが可能です。さらに、サプライチェーンの中で、異なる地域に立地する複数の企業を仕入れ先として確保しておけば、被災した地域の企業が供給をストップしても原材料自体の供給はストップさせることなく、重要事業を継続できるようになるはずです。

さらに、納入先に関しても幅広い地域の顧客を持っていれば、災害などによる売り上げ減を最低限に抑えることができるようになります。

 

まとめ

今回は、工場などの製造業において、BCPを策定する際に注目すべきポイントを解説しました。BCPの策定に関しては、大企業ではかなり進んでおり、内閣府が公表した資料では、「現在策定中」を含めると、8割強の大企業がBCPの策定に取り組んでいるとなっています。しかし、中堅企業に関しては、まだ5割程度と、BCPに対する意識にかなりの格差があるように思えます。

しかし、自然災害だけでなく感染症問題などのことを考えると、中小企業にとってもBCPの策定は非常に大切になると考えられるのではないでしょうか。特に、複数拠点を持っていない事業者の場合、リスクの分散をどのようにして行うのかをあらかじめ検討し、その準備をしておきましょう。

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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