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工場や倉庫の改修工事中の火災について。工事中の防火管理のポイント

2022年 RENOVATION



今回は、工場や倉庫などの改修工事において、過去に国内で発生した工事中の火災事故事例や工事中の防火管理について解説します。

工場や倉庫は、大切な製品を製造・保管する場所という特性上、一般の建物よりも厳重な火災予防対策が施されています。また、定期的に消防訓練や避難訓練なども行われている施設が多く、安全対策については万全な状況が維持できていると考えられます。

しかし、意外に見落とされがちなのが、工場や倉庫などの改修工事を行う時の、防火管理についてです。どのような建物でも、そこに存在するだけで、徐々に劣化が進行してしまうものですので、定期的な塗装工事や屋根修理など、大規模な改修工事が行われることになります。そして、過去にこういった建物の改修工事中に火災が発生してしまうという事例が意外に多くあると言われています。

そこでこの記事では、国内で過去に実際に発生した、工場や倉庫における改修工事中の火災事例や、工事中の防火管理のポイントをご紹介しきます。
 

過去に発生した工事中の火災事例について

それではまず、工場や倉庫などの工事において、国内で過去に発生した工事中の火災事例をいくつかご紹介していきましょう。過去の事例について、「なぜ火災が起きたのかか?」を学ぶことで、より効率的な防火管理ができるようになるでしょう。
 

溶接の火花が塗装設備に降りかかり火災

この事例は、既存工場に並行して倉庫を建築するという工事中に起きた火災です。火災原因は、溶接の火花が、既設工場内で稼働中の塗装設備に降りかかり、火が出てしまった…と言うものです。火災に至るまでの流れは以下のようになっていたそうです。
 

  1. 当日は小雪が舞う天候であったことから、高所での作業が危険なため、請負工事業者(請負者)は工場責任者(発注者)に当日の作業中止を申し入れ、作業中止が決まった。
  2. その後、鉄骨作業者が現場に到着。請負工事責任者は、現場に到着した作業員に「配慮」し、朝決めた予定を変更して作業を実施させた。
  3. この時、シートで覆われていることから、工場内の様子を請負工事責任者は理解できないのにもかかわらず、独断で溶接作業を開始した。※これが火災の直接的な原因
  4. 既存工場側は、工事がストップしていると考えているため、可燃物である塗装設備を稼働させ作業を行っていた。ここに、溶接の火花が降り注ぎ出火。

この火災事故の主な原因は、当日の朝に中止を決めたにもかかわらず、請負工事責任者の独断で工事を行ってしまったことです。請負工事責任者は、工事中止決定後に来た職人について、「作業しなければその日の収入が無くなってしまう」ことを考慮し、かつ雪の降り方がややおさまってきたことから、作業を許可したとのことです。また、工場責任者に報告しなかったのは、「①鉄骨上の作業となるため、雪の危険で許諾を得られないかもと考えた」「②雪が強くなればすぐに中止するつもりだった」「③生産現場の状況を理解せず、勝手に工事内容が生産活動に悪影響を及ぼすことはないと考えた」「④作業中止が決定した後だから、工場責任者は見回りに来ないと考えた」などが理由だそうです。

今回の火災は、当日朝に決めた「工事中止」をそのまま守るか、予定を変えて作業を行うのならば、工場責任者からの許可を取っていれば、起こり得なかったと考えられます。
 

食品工場工事中に溶断火玉で火災

これは食品加工工場の新築工事現場で起きた事例です。工場の新築工事となると、さまざまな工程を請け負う専門会社が現場内に混在することになります。この火災事故が起きたケースでも、アルミサッシの取付けを請け負った会社の他、土工事や左官工事を担当する会社の作業員が混在して作業を行っていたとされます。
この工事現場にて、アルミサッシの取り付けを請け負った業者は、作業員3名で入場し、前日に引き続いてサッシの取り付け作業を行っていたそうです。そして、午前10時ごろ、2階外壁でアルミサッシを窓枠に溶接する作業が完了。次いで、外壁の開口枠と窓枠との間のつなぎに使用した直径9mmの鉄筋をアーク溶断したところ、火玉が2階床と外壁との隙間(1.5cm)から1階に向け落下。

この時、作業員は火災の不安があったため、数秒間隙間から確認したものの、燃えている様子が無かったことから、「大丈夫だろう」と考え、別の箇所の溶接作業を開始した。その後、数分してから、火玉が落ちた隙間から黒い煙が上がり始め、続いて2階まで炎が立ち上がるまでの火災が発生した。実は、アーク溶断の火玉が落下した場所は、冷蔵・冷凍設備の設置が予定されていた場所で、壁や天井に断熱のため発泡ウレタンが吹き付けられていて、これに着火したため、一気に火が大きくなったとされています。

この火災事例の原因については、以下のような事があげられています。
 

  1. 火玉の残火確認していない。上述の通り、数秒間で「火災は起きていない」と決めつけているように、判断が早すぎることが一つの要因でしょう。
  2. 工程管理が不適切なのも大きな要因です。溶断火玉が落ちてくる可能性があるにもかかわらず、可燃性の発泡ウレタンの吹き付けを先に終わらせているなど、工程管理が明らかに不適切だという点も火災の原因になっています。
  3. 溶接時の養生が不十分であったことも大きいです。溶接作業時には、防火シートによる養生を行うことになっていたのですが、作業員が、一か所につき1分以内で作業を完了させたいと考え、適切な養生を怠っていたとわかっています。


このように、ちょっとした不注意や工程管理のミスなどにより、大規模火災が発生してしまう恐れがあります。

 

 

工事中の防火管理について

それではここからは、工場や倉庫などの改修工事を行う場合に注意しておきたい防火管理のポイントをご紹介していきます。

 

 

 

 

工事中の主な出火原因について

工場や倉庫での工事において、火災事故を防ぐ為には、「火災の原因が何なのか?」を知っておく必要があります。主な火災原因が分かっていれば、対処しなければならないポイントも理解できますので、以下を押さえておきましょう。

 

 

 

 

  • 溶接・溶断作業時の火花など
  • 作業員のタバコの不始末
  • 放火・放火の疑い


工事現場で、最も注意すべきなのは溶接や溶断作業により発生する火花や火玉だと考えられるでしょう。上で紹介した、過去の火災事例でも、溶接・溶断作業が原因となっているケースは非常に多いです。他には、作業員などが休憩中にタバコを吸う場合、その喫煙の不始末により火災に発展してしまうという事例も多いようです。なお、工事現場は、可燃物がたくさんありますので、夜間は施錠するなど、放火対策などもきちんと行っておかなければいけません。

 

 

 

 

工事中の防火管理業務

それでは最後に、工事中の火災事故を無くすための防火管理業務のポイントについてもご紹介しておきます。ここでは、出火防止のポイントを主にご紹介しておきます。

 

 

 

 

  • 溶接・溶断時の防火管理 溶接・溶断作業を行う場合、火花が飛んでしまいますので、火災を引き起こさないように周囲を不燃性のシートで囲うなどの防火対策が重要です。また、可燃性物品や危険物のそばで作業を行うことを禁止します。
  • 放火防止 現場の工事資材などは整理整頓し、可燃性物品などは外部から見えないようにするのが好ましいです。また、関係者以外の侵入が無いか定期的に現場内を巡回するようにし、夜間は立ち入りできないように施錠しましょう。
  • 喫煙管理 現場内での喫煙ルールをきちんと決めて、作業員にそれを守らせなければいけません。例えば、喫煙所を設置し、それ以外の場所での喫煙を禁止するなどの対策が増えています。


参照:東京消防庁防火管理課資料より

 

 

 

 

まとめ

今回は、工場や倉庫などにおいて、工事中に発生する火災事故について解説してきました。この記事内でご紹介しているように、工事中の火災は意外に珍しいことではなく、実はちょっとした不注意や工程管理のミスなどから、建物が全焼してしまうような結果を招いてしまう危険が存在します。

上述した火災事例でも、アーク溶断を行う作業員が、指示通りに防火シートによる養生を行っていれば、溶断火玉が落下することはなく、火災は発生していないでしょう。また、火玉が落ちた場所についても、「火玉が落ちてくる可能性がある」にもかかわらず、先に発泡ウレタンの吹き付けを完了させてしまっていたという点は、工程管理上のミスと考えられます。

このように、工事中の火災は、ほんの些細なミスや不注意から起きてしまうものだということを覚えておきましょう。

 

 

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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