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工場・倉庫を増築する際の注意点を建築基準法に沿って解説

2023年 RENOVATION

工場・倉庫を増築する際の注意点を建築基準法に沿って解説

工場・倉庫の増築

 

工場や倉庫は、従業員の増員、事業計画の変化に伴う生産量の増加や取扱い製品の変更、近年頻発している自然災害への対処などから建物の増築を検討する企業が増えています。しかし、工場や倉庫の増築には、多くのメリットがある反面、注意点を知らない事で思わぬ失敗をしてしまう可能性があります。

 

工場・倉庫の増築は、企業によってその規模や目的がさまざまですので、増築にかかる費用のイメージが付きにくいこともあり、コスト面に気を取られる場合が多いです。しかし、工場や倉庫の増築では、建築基準法を抑えておかなければ、知らないうちに法律違反をしてしまう可能性があります。

 

そこでこの記事では、工場・倉庫を増築する際の建築基準法上の注意点/を解説します。

 

 

工場・倉庫を増築するメリットとは?

工場や倉庫の増築は、企業によってその理由はさまざまです。それでは、実際に工場・倉庫の増築を決断する企業は、何をメリットと考えているのでしょうか?ここでは、工場・倉庫増築のメリットと注意点を簡単にご紹介します。

 

 

工場・倉庫増築のメリット

工場・倉庫を増築するメリットは、一言でいうと「工場(もしくは倉庫)が広くなる」ことでしょう。工場・倉庫が広くなれば、従業員の作業スペースが広くなるので、作業効率の向上やより安全を確保した作業が行えるようになるなど、生産性の向上が見込めます。

 

また、工場・倉庫の増築は、設備の更新や人員の増加に合わせて行われるケースが多いのですが、この場合も、最新設備の導入や作業人員の増加により生産性の向上を期待することができます。工場・倉庫の生産性向上に繋がれば、ゆくゆくは企業としての業績アップにつながるはずです。

 

工場や倉庫の生産性向上を目指す場合、新たな工場(倉庫)を新設するという方法も考えられます。しかし、工場・倉庫の増築で対応する場合、既存の施設に「必要な部分」を付け加える工事になるため、建て替えによる床面積の増加や新たな工場(倉庫)の新設に比べて、工事にかかる費用を大幅に抑えることができます。さらに、増築であれば、工場や倉庫の稼働を止めることなく、通常業務に並行して工事を進めることができる可能性がある点も大きなメリットです。

 

 

工場・倉庫増築の注意点

工場・倉庫の増築を検討した場合、何を目的とした増築なのかを明確にしておく必要があります。増築は、建て替えや新築と異なり、実現可能な工事内容に制限があり、出来ることが限られているからです。そのため、増築の目的がはっきりしないまま計画を進めると、単に作業スペースが広くなっただけで「使いづらさ」を感じる工場・倉庫になり、解消したかった問題が結局残ってしまう可能性があります。

 

この他にも、増築は、既存の建物に新しい部分を付け加える工事となるので、全体的な外観イメージのバランスが崩れてしまうケースがあります。さらに、増築によって建物の耐久性が低くならないよう、接合部の補強が必要になり、想像以上にコストがかかってしまうこともあるので注意しましょう。

 

工場や倉庫の外観デザインを一新したい、作業動線や建物の造りを大幅に変更したいという目的の場合、増築にかかる費用が嵩み、増築ではなく建て替えや新築の方が望ましいケースも珍しくありません。したがって、何を目的としているのかによって「本当に増築という手段が正しいのか?」という点は慎重に検討する必要があります。

 

なお、築年数が経過した建物で、既存建物の老朽化が進んでいる場合は、増築ではなく建て替えもしくは新築を検討すべきでしょう。

 

 

工場・倉庫の増築は、建築基準法による制限に注意が必要!

工場や倉庫の増築を検討した場合、建築基準法による制限に注意が必要です。建築基準法では、建築物を新築、増築、改築又は移転することを総称して「建築」としており、増築に関して明確な定義はしていません。ただ、国土交通省が公表している資料では、「増築」について以下のように定義されています。

 

  • 既存建築物に建て増しをする、又は既存建築物のある敷地に新たに建築すること。
  • 既存建築物のある敷地内に別棟で建築する場合、建築物単位としては「新築」になるが、敷地単位では「増築」となる。

 

引用:国土交通省資料より

 

具体的には、現在ある工場や倉庫の床面積を増やす、1階建ての建物を2階建てにするなどの工事が「増築」となります。なお、敷地内に別棟の倉庫を新たに建てる、カーポートを作るといった工事の場合、建物単位でみると新築になりそうですが、増築に該当します。建築基準法では、土地に定着する工作物の内、「屋根及び柱もしくは壁を有するもの」が建築物と定義されています。そのため、既存の工場・倉庫の敷地内に、置き型の物置、塀、門、カーポートなどを作るといった場合でも、増築とみなされる場合があるので注意が必要です。

 

工場・倉庫の増築を検討した場合も、建築基準法によるさまざまな制限があります。日本国内の建築物は、建築基準法上、以下の部分に制限が設けられています。

 

  • 建ぺい率・・・敷地面積に対する建築面積の割合です
  • 容積率・・・敷地面積に対する延べ床面積(すべての階の床面積の合計)の割合です
  • 高さ制限・・・建物の高さの基準(建築物の高さの上限が地域ごとに定められています)
  • 斜線制限・・・道道路境界線または隣地境界線からの距離に応じた建築物各部分の高さ制限
  • 既存不適格建築物・・・建築時は法令基準を満たしていたが、法改正により適合しなくなった建物

 

建築基準法では、上記のようなさまざまな制限が設けられています。例えば、既存の建物が、既に建ぺい率や容積率について、制限範囲ぎりぎりで建てられている場合、法律違反になるため増築することはできません。また、築年数が経過した建物で、既存不適合建築物となっている場合、大規模修繕・模様替え、増改築する際には、違反建築物を是正してから計画を進める流れが一般的なため、増築以外の部分にもコストがかかる可能性があります。なお、既存不適格建築物に対する大規模な修繕・模様替えあるいは増改築では、「基本的には既存不適格の部分にも新規定を適用する必要がある」とされています。しかし、全ての項目を現行の規定に合わせることが難しい場合も多いため、建築基準法第八十六条の七で制限の緩和に関しても定められています。

 

参照:建築基準法第八十六条の七

 

 

一定規模以上の増築は、建築確認申請が必要

工場や倉庫の増築時は、上述した建築基準法による制限を守らなければいけません。さらに、一定規模以上の増築の場合は、建築確認申請が必要です。建築確認申請とは、自治体などへ申請書や工事内容、図面などを提出し、建築基準法を満たした工事であるということを確認してもらう手続きです。

 

建築確認申請をせずに増築工事を進める、もしくは申請内容とは異なる工事を行うことは、違法建築になります。なお、建築確認申請が必要かどうかのラインは、建築基準法6条にて以下のように定められています。

 

(建築物の建築等に関する申請及び確認)

第六条 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。

 

一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの

二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの

三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの

四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物

 

引用:e-Gov|建築基準法

 

工場や倉庫は特殊建築物に定められています。前述の建築基準法6条に規定されているとおり、原則として街中で建物を増築する場合には建築確認申請が必要となります。なお、建築基準法第6条では、「前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。」とも定められています。

 

防火地域または準防火地域外に建てられている工場や倉庫で、増築面積が10㎡以内に収まる場合は、その増築工事の建築確認申請は不要となります。

 

 

まとめ

工場や倉庫は、従業員の増員、事業計画の変化に伴う生産量の増加や取扱い製品の変更など、さまざまな理由で増築を行う場合、工場や倉庫の生産性が向上し、企業の業績アップを目指せるという大きなメリットがあります。

しかし、実際に工場・倉庫の増築を行う場合、建築基準法に定められたルールに従わなければならないということを忘れてはいけません。建築基準法に違反した増築を行うと、違法建築となります。そして違法建築状態の工場や倉庫は、罰金の対象になるといった罰則が用意されているほか、その後の増改築ができなくなる、融資を受けられなくなるなど、さまざまな不利益を被る可能性があるので注意しましょう。

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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