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倉庫・工場の耐震基準と耐震性を向上させる方法を構造別に解説

2023年 RENOVATION

倉庫・工場の耐震基準と耐震性を向上させる方法を構造別に解説

倉庫・工場の耐震工事

 

工場や倉庫などの大規模施設では、多くの従業員が一箇所に集まって働くことになりますので、大規模地震などが発生したとしても、施設内で働く人の命を守れるように高い耐震性が求められます。日本では、どのような建築物を建てる時でも、建築基準法で定められた厳しい耐震基準を満たさなければならないことから、基本的には一定以上の耐震性を持った建築物に仕上がっていると考えられています。しかし、工場や倉庫など、営業目的で使用される建物については、「できるだけ長く同じ建物を使用する」ことが目指されているため、中には現在の耐震基準を満たしていないケースが考えられます。日本国内の耐震基準は、1981年に変更されていて、それ以前に建てられた建築物は、現在の耐震基準を満たしていない状態で運用されているものも存在します。

当記事では、日本国内で建設される建物に求められる耐震基準の基礎知識や、建物の耐震性を向上させるための方法を、構造別に解説します。

 

耐震基準とは?

日本国内の耐震基準についてご紹介します。日本は、諸外国と比較すると、地震の発生件数が非常に多いことから、国内に建てられる建築物の安全性を確保するため、耐震基準が定められています。耐震基準は以下のように定義されています。

耐震基準(たいしんきじゅん)とは、建築物や土木構造物を設計する際に、それらの構造物が最低限度の耐震能力を持っていることを保証し、建築を許可する基準である。

 

引用:Wikipedia|耐震基準より

このように、耐震基準は、地震が発生した時のことを想定し、建築物が最低限の耐震性能を保持していることを保証する基準です。日本国内では、この耐震基準をクリアしなければ、建築許可がおりないため、建物を建てられない決まりになっています。

そして、2022年現在は、新耐震基準と呼ばれる耐震基準が採用されていますが、これは1978年に発生した宮城県沖地震により非常に多くの建物に被害が出たことから、建築基準法施行令が改正され、新耐震基準へと切り替わりました。

 

 

旧耐震基準と新耐震基準の違い

耐震基準の話をするときには、『旧耐震基準』という名称も良く登場します。それでは、現在採用されている新耐震基準と旧耐震基準では、何が異なるのかもご紹介します。

新耐震基準は以下のように設定されています。

 

 新耐震基準

  • 震度5程度の地震の被災を受けても、ほとんど損壊しないこと

  • 震度6強から7程度の地震の被災を受けた際も、建物が倒壊や崩壊をしないこと

 

このように、現在採用されている新耐震基準では、震度5程度の地震では「倒壊する心配がない」こと、さらに震度7程度の大規模地震でも建物が倒壊や崩壊をしないような設計をすることと定めています。

この新耐震基準は、上述した1978年に発生した宮城県沖地震によって、多くの建物被害が生じたことから、それまでの耐震基準の見直しが必要と考えられたのがきっかけです。実は、1978年の宮城県沖地震は、最大震度が『5』であったのにもかかわらず、建物被害は「全壊580戸、半壊5,185戸、一部損壊57,179戸」と、多くの建物被害が発生しています。これは、旧耐震基準が、「震度5強程度の地震で倒壊や崩壊しないこと」という設定になっており、それ以上の規模の地震は想定されていなかったのが大きな要因と考えられています。

データ参照:

1978年宮城県沖地震による災害現地調査より

つまり、新耐震基準と旧耐震基準の違いは、「想定する地震の大きさ」と「想定する地震による被害の程度」となります。旧耐震基準では、震度5強程度の地震で、建物のヒビや傾きは問題なく「

崩壊しなければ大丈夫

」という定義で、震度6以上の地震の発生は想定されていない基準となっています。逆に言えば、震度6以上の地震が起きた時には、建物が倒壊する可能性があることを示唆しています。

 

なお、旧耐震基準が採用されていた1981年よりも前に建てられて、現役で運用されている建物はまだまだ多いです。こういった建物について、不特定多数の者が利用する建物や避難弱者が利用する建物のうち大規模なものには耐震診断を行うことが義務付けられています。

 

耐震性を向上させる方法とは?

それでは次に、建物の耐震性を向上させるための方法を解説します。ただ、一口に「建物の耐震性を向上させる」と言っても、建物にはいくつかの構造的な違いが存在し、どの構造が採用されているのかによって適切な方法は変わります。倉庫や工場ついても、一般的に「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」などという構造があり、多くの方は「木造よりも鉄骨などの方が地震には強い」といった印象を持っていることでしょう。

建物の耐震性については、上述した耐震基準が定められていますので、どのような構造を選んだとしても、大規模地震に耐えられるような耐震性能をもっています。しかし、地震が発生した場合の影響については構造ごとに大きく異なります。以下で、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造について、地震による影響の違いをご紹介します。

 

  • 木造

    木造の建物は、筋交(すじかい)や、各所に配置された耐力壁などによって、地震に耐えられるように作られています。同じ大きさの建物の場合、鉄骨などと比較すると、木は軽量でしなやかな材質ですので、揺れが小さくなるのが特徴です。

  • 鉄骨造

    鉄骨造は、骨組みに鉄製や鋼製の部材が採用され、鉄や鋼の粘りによって地震に耐える構造になっています。地震による大きな力が加わった場合、鉄骨が変形することで地震のエネルギーを吸収し、建物の倒壊を防ぎます。ただ、重量がある構造ですので、揺れが大きくなりがちです。また、鉄は高温になると強度が大きく低下してしまいますので、地震によって火災などが発生した時には、倒壊の危険性が高くなります。

  • 鉄筋コンクリート造

    鉄筋コンクリート造は、コンクリートの中に鉄筋を入れて作られた構造です。コンクリートは圧縮強度が高く、鉄筋は引っ張りに強いという特徴があり、この二つの長所を掛け合わせることで非常に頑丈な建物が実現します。鉄筋コンクリート造は、鉄骨と同じく重量があることから揺れは大きくなりがちですが、頑丈な分、地震には非常に強い構造と言えます。ただ、1階部分を駐車場にしているなどの理由で、壁の配置に偏りが生じている場合、耐震基準を満たしている場合でも損壊するリスクが高くなります。

 

それでは、倉庫や工場にて、建物の耐震性を向上させたいと考えた時には、どのような対策を施せば良いのでしょうか。以下で、代表的な手法をいくつかピックアップしてご紹介します。

 

鉄骨造の倉庫・工場:ブレースを増やす

ブレースは、いわゆる『筋交』のことで、鉄骨造の倉庫や工場では、耐震性向上のために鉄骨ブレースを追加するという手法が良く採用されています。ブレースは、柱や梁で囲まれた四辺形の軸組を持った構造物の対角線上にタスキ掛けのように設けます。ブレースを入れることで、水平方向からの力に強くなりますので、地震による横揺れがあった際でも、建物が変形するのを防止することが可能です。

 

鉄筋コンクリート造の倉庫・工場:壁を増やす

建物の耐震性を確保するため、比較的簡単なうえに高い効果が得られると言われる方法が「コンクリート壁を増やす」という対策です。建物の耐震性は、バランスよく壁を配置する、壁を増やすだけで大きく向上させることができます。ただ、倉庫や工場の場合、施設内に壁を増やすことで、業務に支障が出る可能性があるので、注意が必要です。

建物内に、壁を増やすことができない施設では、外部に控壁(バットレス)を増設するといった方法で耐震性を向上させることが可能です。

 

鉄筋コンクリート造の倉庫・工場:柱の補強

建物の耐震補強工事でよく採用される手法として、既存の柱に鋼板を巻くなどして、柱を補強するという方法があります。柱や梁を補強することで、建物の強度や粘りを向上させることができますので、地震による揺れがあっても、建物が倒壊するリスクを低減させることができます。

 

まとめ

今回は、建築基準法で定められている耐震基準と、建物の耐震性を向上させるための方法について解説しました。

日本で定められている耐震基準は、万一地震が発生した時でも、建築物が最低限の耐震性能を保持していることを保証する基準であり、この基準をクリアしなければ建築許可がおりない決まりになっています。記事内でご紹介したように、現行の新耐震基準は、震度7の地震でも建物が倒壊や崩壊をしないレベルの強度を持っていることが条件ですので、新耐震基準に則って建てられた建物はある程度の安全性が確保されていると考えても良いでしょう。

しかし、日本国内には旧耐震基準で建てられている建物が多く残っており、こういった建物は大規模地震で倒壊しても何らおかしくないと考えなければいけません。旧耐震基準では、震度6以上の地震を想定していませんし、今後発生すると予想されている南海トラフ地震や首都直下地震で大きな被害が生じてしまうと考えられます。

倉庫や工場は、大切な製品を製造・保管するだけでなく、多くの従業員が集まって働く場所ですので、大規模地震があっても従業員の命を守れるだけの安全性の確保を考えることは大切です。

 
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この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 常務取締役 大阪本店長
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

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