食品工場・倉庫建設設計施工の三和建設株式会社

INFORMATION

お役立ち情報

熱中症対策の義務化!工場、倉庫でできる暑さ対策と改修工事を紹介

2025年 RENOVATION

熱中症対策の義務化!工場、倉庫でできる暑さ対策と改修工事を紹介

熱中症対策
 
2025年6月1日から、改正労働安全衛生規則が施行されます。
 
この改正では、事業者に対して熱中症対策が義務化されます。具体的には、熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけ、その状況に応じて、迅速かつ適切に対処することが可能となるよう「早期発見のための体制整備」や「熱中症重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」、「関係作業者への周知」を義務付ける内容となっています。なお、この熱中症対策義務化については、罰則付きで施行されます。
 
当記事では、労働安全衛生規則改正による熱中症対策義務化の内容を分かりやすく解説するとともに、工場・倉庫で必要になる暑さ対策について解説します。

 

熱中症対策義務化の内容について

昨今、地球温暖化の影響からか、日本の夏は年々猛暑化が進んでいると言われています。実際に、2025年もこの記事を作成している5月半ばで、既に30℃を超える夏日を記録した地域が日本各地で報告されています。毎年のように「記録的な暑さ」という言葉を耳にするようになった昨今では、熱中症が原因で死亡するケースも増加しており、職場での熱中症による死亡災害については、近年連続して30人を超える状態となっています。
 
そして、熱中症による死亡災害については、「初期症状の放置・対策の遅れ」が大きな要因になっているとされています。
 
職場における熱中症による死亡災害の傾向
引用:厚生労働省資料より
 
上図の通り、令和2年~5年に発生した熱中症死亡災害では、そのほとんどで「初期症状の放置・対策の遅れ」が指摘されるという結果になっています。ただ、現行法令では、熱中症による健康障害の疑いがある人の早期発見や、重篤化を防ぐための対策について、定めがないという状況でした。そこで、国は、労働安全衛生規則の改正により、事業者が講ずべき熱中症対策について法令上明記したのです。
 
それでは、同改正の熱中症対策義務化について、おさえておくべき内容についてもご紹介します。

 

熱中症対策義務化の内容

今回の労働安全衛生規則改正では、事業者の熱中症対策として「熱中症患者の報告体制の整備、周知」「熱中症の悪化防止措置の手順作成と周知」の二つが以下の通り明記されます。

労働安全衛生規則
(熱中症を生ずるおそれのある作業)

第612条の2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。
2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。
引用:厚生労働省令第五十七号

同改正による熱中症対策義務化の対象は、「暑さ指数(WBGT) 28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」となっています。熱中症対策を怠った場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるなど、非常に厳格な対応がなされるので、その点も注意が必要です。

なお、今回の熱中症対策義務化の内容については、厚生労働省がイラストを使って詳しく解説しています。以下の資料をぜひ確認してください。

参照資料:厚生労働省資料より

 

工場、倉庫の熱中症対策について

工場や倉庫における熱中症対策について解説します。「夏は暑くて冬は寒い」といったイメージのある工場や倉庫は、しっかりと暑さ対策を施す必要があると考えられます。

ここでは、すぐにでも開始できる暑さ対策と、建物の改修工事によって実現できる熱中症予防をご紹介します。

 

すぐにでも開始できる暑さ対策

ここではまず、厚生労働省の「職場における熱中症対策の強化について」という資料の中で指摘されている対策をいくつかピックアップします。

 

  • 休憩場所の整備など、作業環境の管理
    WBGT値(暑さ指数)を低減する対策を行うことで、熱中症の発症リスクを抑えることができます。例えば、直射日光や照り返しを受けるような作業環境の場合、簡易的な屋根を設置して日光を遮るなどが有効です。この他にも、ミストシャワーなどの散水設備の設置により作業場所の温度を下げる対策も有効です。また、熱中症の疑いがある従業員が出た際、速やかに対処できるようにするためにも、作業場所の近くに冷蔵を備えた休憩所や日陰のある休憩場所を確保することが大切です。
  • 作業時間の短縮など、作業管理を行う
    WBGT値が基準値を大幅に超える場合、熱中症の発症を防ぐためにも、原則として作業を控えるべきとされています。やむを得ず作業を行う場合でも、単独作業を控え、休憩時間を長めに設定する、管理者が従業員の健康状態を小まめに確認するなどの作業管理を行いましょう。この他、空調服の支給や小まめに水分、塩分が補給できるようなアイテムの設置など、熱中症リスクを低減できる作業環境を整える必要があります。
  • 暑熱順化
    暑熱順化は本格的に暑くなるまでに、体を暑さに慣れさせておくという対策のことを指します。暑熱順化の有無は、熱中症の発生リスクに大きく影響すると言われており、職場での熱中症対策を進める時には、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を増やしていくといった対策が推奨されています。特に、新規採用者に関しては、計画的な暑熱順化のプログラムを組む必要があるとされています。
  • 労働衛生教育
    管理者と労働者に対して、熱中症に関する教育をしっかりと行っておくことも大切です。厚生労働省では、熱中症予防の労働衛生教育として「熱中症の症状」「熱中症の予防方法」「緊急時の救急処置」「熱中症の事例」などについて、労働衛生教育を行うことを推奨しています。

 
工場や倉庫は、通常よりも熱中症リスクが高くなる作業現場も多いです。したがって、従業員が安全に健康に働けるようにするためには、上記のように作業環境を整えていく必要があります。
 
なお、夏場の熱中症対策は、水分と塩分の補給が非常に重要とされています。最近では、どのような職場でも、従業員の熱中症リスクを低減するため、いつでも水分が補給できるような環境を作っている場合が多いと思います。しかし、水やお茶など、水分の補給だけでは熱中症対策として不十分です。汗で失われるのは水分だけでなく、塩分やミネラルも含まれており、これらが補給されないと熱中症のリスクは高くなります。そこで、昨今の熱中症対策では、効率的に塩分の摂取ができるアイテムが登場しており、休憩所などに常備しておくことが推奨されています。
 
三和建設では、職場での熱中症による労働災害を削減するため、水分と塩分を効率的に摂取できる「ゼネコンがつくったしおゼリー」を開発、販売しています。80%以上が水分のゼリーに塩分やマルチビタミン、ミネラルなどがバランスよく配合されている商品のため、お子様や高齢の方でも摂取しやすく、冷蔵庫などで冷やしておけば、体の中から体温を下げる効果も期待できます。いつでも従業員が手に取れる場所に置いておくことで、効果的な熱中症対策が実現します。

 

累計販売本数180万本

ゼネコンがつくったしおゼリー

「ゼネコンがつくったしおゼリー」公式販売サイトへ

 

工場・倉庫の暑さ対策を目的とした改修工事

工場や倉庫の熱中症対策を検討した時には、作業環境や働き方などを工夫することも有効なのですが、建物そのものの性能を向上させるという方法もおすすめです。工場や倉庫などの大規模施設は、大きな壁面と広い屋根を持っているため、どうしても直射日光の影響を受けやすくなり、建物内部が暑くなりやすいという構造上の問題を抱えています。さらに、屋根材として金属製の折板屋根が採用されることが多いことも、内部に熱が伝わりやすくなる理由となります。
 
逆に考えると、屋根面や壁面から伝わる熱を遮ることができれば建物内の温度上昇を抑えることができ、従業員の熱中症リスクを低減することができるでしょう。ここでは、工場・倉庫の暑さ対策として有効な改修工事をいくつかご紹介します。
 

  • 屋根や外壁の塗装工事
    屋根や外壁の塗装に使用する塗料の中には、断熱や遮熱効果を持つものがあります。つまり、断熱塗料や遮熱塗料を使って、屋根や外壁の塗装工事を行えば、壁面・屋根面から侵入する熱を遮ることができるようになるわけです。どのような建物でも、定期的な塗装メンテナンスが必要になるので、そのメンテナンスに合わせて断熱もしくは遮熱対策を施すと良いでしょう。
  • 屋根や外壁の断熱工事
    屋根や外壁の断熱対策は、塗装工事以外にも方法があります。一般住宅の断熱対策に用いられる、グラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材、ウレタンフォームやポリスチレンフォームなどの発砲プラスチック系断熱材を壁や屋根に施工するという工事が一般的です。壁や屋根の断熱性が高くなれば、外気温の影響を受けにくくなるため、熱中症リスクを低減できます。
  • 二重折板(カバー工法)
    屋根の改修工事もかねて、暑さ対策に有効な方法が、二重折板です。これは、既存の屋根材の上に新しい折版屋根を重ねて施工する方法で、屋根材と屋根材の間に空気層ができるため、断熱効果が期待できます。なお、塗装工事などと比較すると、大掛かりな工事となるため施工コストが高くなる、屋根の積載重量が大きくなるため災害時に被害が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。

上記以外にも、遮熱シートを屋根面に設置する、スプリンクラー設備を屋根に設置して打ち水の原理で屋根の温度を下げるといった対策も有効です。
 

工場天井面_遮熱シート施工前

工場天井面_遮熱シート施工前

工場天井面_遮熱シート施工後

工場天井面_遮熱シート施工後

 

工場倉庫の断熱、遮熱についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。倉庫と工場の暑さ対策に断熱・遮熱する方法とメリットを解説

 

まとめ

日本の夏は、年々猛暑化が進んでいると言われており、職場での熱中症による死傷者数はここ数年、急激な上昇傾向を見せています。

夏季の気温と職場における熱中症発生状況(H24~)
引用:厚生労働省資料より

 
職場での熱中症の発生は、事業者側に一方的な責任があるわけではありませんが、従業員が安全に働ける環境を作ることや、熱中症に対する正しい知識を持って対処できるようにすることで、従業員が死亡に至るような重大事故は防げる可能性が高くなるでしょう。
 
2025年の夏も全国的に猛暑が予想されていますし、従業員が安全に健康的に働けるようにするため、早めに準備に取り掛かりましょう。

この記事の著者

著者 : 辻中 敏

辻中 敏 非常勤取締役
1990年三和建設株式会社 入社、2021年同社 専務取締役就任

改修工事は新築以上に経験が求められます。これまでの実績で培ったノウハウを惜しみなく発揮いたします。 特に居ながら改修については創業以来、大手企業様をはじめ数多くの実績があり評価をいただいています。工事だけではなく提案段階からプロジェクトを進める全てのフローにおいて、誠実にお客さまに寄り添った対応を行い、 安全で安心いただける価値を提供いたします。

施工管理歴15年、1級建築施工管理技士、建築仕上げ改修施工管理技術者

前のページへもどる