社長のメッセージ

4つもあるコンクリートの強度

圧縮強度とは文字通り押し潰そうとする力に対する強度であり、鉄筋コンクリート造においてはコンクリートの圧縮強度が構造体全体の強度を決める重要の要素となる。

建築工事標準仕様書JASS5(鉄筋コンクリート工事2003年度版)によれば、一般的に用いられるコンクリートの圧縮強度を表す用語は4種類もある。

きれいな仕上がり5.JPG

①呼び強度
文字通りコンクリートを注文する際に指定する強度。これが一義的に水セメント比に換算される。
つまり、「27Nのコンクリートくれ」と言ったら、工場はこれに見合う水セメント比のコンクリートを作ってもってくる。

②設計基準強度(Fc)
建物の構造的強度(耐震性など)を決定する強度。
つまりFc値は設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。

③耐久設計基準強度(Fd)
Fcとは全く別の観点で、構造体コンクリートの耐久性(すなわちひび割れの抑制度合い)を決める数値。
これを「強度」と呼ぶことが誤解を招く原因でもある。
コンクリートの耐久性は水セメント比の影響が大きい。
呼び強度の欄にも書いたとおり、強度と水セメント比は一義的に決まるために、便宜上、耐久性と強度を関連付けている。
Fd値も設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。

④品質基準強度(Fq)
別々の観点で「基準」となる強度がFcもしくはFdのいずれか大きいほうで決まる。
これに、施工ばらつき補正が加わって品質基準強度Fqとなる。

さらに打設時期によって決まる温度補正を加えたものが「呼び強度」となる。

設計者はもとより施工技術者においても、この4種類のコンクリート強度を理解していないといけない。

温度補正や施工ばらつき補正の考え方については次の機会に。

 

森本 尚孝


  • 2010年7月30日


再び、長期優良住宅先導事業に

国土交通省が実施する「長期優良住宅先導事業」なる取組みがある。

つい先日、平成22年度第1回事業の採択事業が発表された。
平成20年度から年2回のペースで実施され、今回で通算5回目である。
当初は、「超長期住宅先導的モデル事業」や「長期優良住宅先導的モデル事業」と呼ばれていたが、今回の名称は冒頭の通り「長期優良住宅先導事業」である。
名前を変われども、その主旨や中身は同じである。

三和建設株式会社では長期優良住宅の考え方を取り入れたマンション「エス・アイ200」を提唱しており、平成21年度第1回事業でその提案が採択され、長期優良住宅の認定を受けたマンションを我が国で最初に完成させた。

そして、このたび通算5回目となる平成22年度第1回事業において、再び三和建設の「エス・アイ200」が採択されたのである。

ちなみに本事業のこれまでの採択実績数は次のとおりである。

長期 実績表.JPG

かねてから指摘している通り、マンションの採択実績は本当に少ない。

本事業の事務局である(独)建築研究所による平成22年6月11日付「建築研究所ニュース」に、本事業の総評が書かれている。

この中で、本事業の共同住宅新築部門に関し、
「一度の建設での供給戸数が多く、地域の環境形成に大きな影響を与える共同住宅においてこそ、(中略)長期に使用可能な優良住宅を普及させていくことが重要」
とある。

確かにその通りではある。

しかし、ひとつ大きな視点が抜けている。共同住宅は作るのも壊すのも大変なのである。まして鉄筋コンクリート造となれば、新築や解体において経済的にも環境的にも大きなコストがかかる。

マンションにこそ長期優良住宅の考え方を!

コンクリート解体.JPG

森本 尚孝

 

 

 

 

 

 


  • 2010年6月25日


アーケードと建築

近鉄奈良駅を出て賑わいのある東向商店街という名前のアーケード街を南に向かって歩いていった。
いわゆる全蓋式アーケードが設置されている。突然の雨だったので重宝した。

アーケード街の出口付近で、他の店と趣の違う景色が西側に現れた。
南都銀行本店である。
商店街の南端に位置し、その東側にアーケードが付置されているという格好になる。

写真 2.jpg

アーケード街を出て南側にまわるとようやく建物の全容が明らかになる。
イオニア式の列柱が重厚さをかもしだすこの建築は1926年に建てられたものだという。
当然アーケードの施工はその後のことであろう。

写真 4.jpg

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ここで思ったのである。アーケードをこの建物の北端で止めるという選択肢はなかったものか。
当然、銀行の東向い側の店舗の事情もあるから、南都銀行の意向だけでは決まらないが。

銀行は店舗でもあるから、入口にアーケードがあるほうが利用客の利便性は増す。
しかしアーケードが邪魔で、古都奈良には珍しい洋式建築の全容は見えない。
この場合、正面である南側や西側は上まで見渡せるので問題は少ないが、あくまで東側は見えない。

アーケードと建築との関係性を考えさせられる。

森本 尚孝


  • 2010年6月 8日


工事中にゼネコンが倒産したら・・・

 

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車で通りがかりに撮った写真なのでうまく映っていないが、躯体工事中なのに外部足場がなく、次のフロアの躯体工事の様子がむき出しになっている。
場所は中国やベトナムではなく日本である。
したがって、この工事現場は普通の状態ではない。

考えられる仮説は次の通りである。
「躯体工事中に工事を請け負っていたゼネコンが倒産した。工事請負契約やゼネコンの法的処理手続きの中で、外部足場が工事現場から撤収されたが、次のフロアの鉄筋や型枠材はそのまま現場に残されている。」

三和建設では、これまで工事中に他のゼネコンが倒産した仕掛り工事を承継して請け負い完成させて施主に引き渡した実績がいくつかある。
発注したゼネコンが工事の途中で倒産した経験をした施主は多くない。当然のことであろう。そうそうあっては困ることだからだ。
そもそも倒産しないゼネコンに発注しないことが一番だが、それでも万一このような不測の事態が生じた場合は対応が大変難しい。

施主の立場においては、すでに支払っている工事代金や仕掛かり工事(半製品)の権利関係を法的に整理して解決していくことが求められ、当然弁護士に相談して事を進めるべきであろう。

ここでは、新たに他のゼネコンが工事を承継する場合のポイントを説明する。

ここでAという工事の途中にBというゼネコンが倒産して、新たにCというゼネコンがこの工事を承継することになったとしよう。
BがA工事の途中まで実施した出来形部分(仕掛かり工事)を「本件建前」、A工事完成のためにCが新たに請け負う工事を「本件新工事」と呼ぶことにする。

本件新工事が、C社と施主との新たな工事請負契約となり、その契約書に盛り込む内容を決める際に問題なるのが主に次のような点である。

①本件建前の出来高の評価
②本件建前の出来形および出来栄え(見える品質)評価
③本件建前の瑕疵(隠れたる品質上の問題)の責任
④本件建前の瑕疵(隠れたる品質上の問題)に起因する本件新工事の品質などに対する責任
⑤本件新工事へのプロセス(打合せ実績や現場に納品されていない発注済製品)に対する評価
⑥本件建前に伴う仮設資機材の権利

課題はこれ以外にもいろいろある。

個別の内容に関してここで詳述することは避けるが、いずれにしても、本件新工事を承継するのはこういうことに慣れたゼネコンでないと後々に新たな問題を引き起こすことになる。

森本 尚孝


  • 2010年5月31日


ドアクローザ

「ドアクローザ」とは開けられた扉を自動的に閉める働きをする装置のことをいう。
開けられた扉をバネの復元力で閉めるというメカニズムによるものが多い。

玄関ドアのように常時あけっぱしにならないようにしておくことが好ましい扉に用いられる。

ちなみに「ドアクローザ工業会」(http://www.dcma.jp/)なるものまである。

写真は手作りのドアクローザである。
みにくい画像だが、重力を利用して扉を強制的に閉鎖するシステムになっていることがわかる。

森本 尚孝

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  • 2010年5月12日


三匹の子ブタと建築構造

まことにどうでもいい話だが、私の5歳になる息子が「三匹のこぶた」の歌を歌っていた。「三匹のこぶたのいっぴきが~♪」という歌いだしで始める。初めて聞いた歌で、あまり童謡っぽくない、どこか異様なメロディーであった。

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「三匹のこぶた」がどこの国の話か知らないが、おそらく欧米であろう。
一匹目のこぶたはわらで、二匹目のこぶたは木で、それぞれ家を作ったが、いずれも狼の息によって吹き飛ばされる。
そして三匹目のこぶたはレンガで家を建て、狼の攻撃に耐えたという話である。

建物に求められる要件について専ら耐風性に焦点が当てられており、レンガ造を良しとしているという点で、この話は極めてヨーロッパ的である。わが国ならこうはいかない。
わが国においては、大正12年の関東大震災によってレンガ造の建物が軒並み崩壊し、以来、組積造は耐震性が低いとされ、その後の建築物にはあまり採用されなくなった。

建物と国柄のかかわりを象徴する話といえよう。
組積造を含む建築構造と耐震性の関係性については、専門家である三和建設の設計部長にバトンタッチしますのであとはよろしく。

森本 尚孝


  • 2010年4月21日


権八西麻布店

小泉首相がブッシュ元米大統領をもてなした場所として知られる権八西麻布店に連れて行ってもらった。
わりに落ち着いたエントランスを入ると、いきなり大空間が広がる。中央部は完全な吹き抜けで2階部分が回廊式になっており、劇場を思わせるつくりである。
天井を見上げるとPC風の梁が細かく配されている。20mはあろう大スパンが何が構成されているか興味深かったが、今回はそこまで注意深く見る機会がなかった。
いずれにせよ大変効果的な設計で、肝心の料理より建物にばかり気をとられてしまった。

 

森本 尚孝

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  • 2010年3月31日


ついに完成! 全国で初めて誕生した長期優良住宅マンション

三和建設の設計施工による「ルネス緑ヶ丘テラス」が、長期優良住宅の認定を受けたマンションとしては全国で初めて大阪府豊中市に完成し、3月10日に竣工式が行われた。

今回のプロジェクトに対し深いご理解と多大なるご協力を頂戴した御施主様からも、三和建設の企業姿勢に対して改めてお褒めの言葉を頂いた。

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本建物は、平成21年度第1回長期優良住宅先導的モデル事業にも採択された。去る3月4日から7日にかけては完成見学会を開催し、国土交通省や学識経験者を含め多くの方にご来場いただき、過分なるご評価も頂戴した。

長期優良住宅がマンション分野でなかなか普及しないことはすでに述べた。三和建設の賃貸マンション提案"エス・アイ200"では、賃貸マンションこそ長期優良住宅の考え方をとりいれるべきだとしている。

今回の実績が、長期優良住宅マンションの普及の足がかりになればと願って止まない。


森本 尚孝


  • 2010年3月12日


サントリー山崎蒸溜所

少し前の話だが、2月1日大安、サントリー酒類(株)山崎蒸溜所にて排水処理施設増設工事の起工式が行われた。設備を除く構築物の設計および施工を三和建設にご下命いただき、今般着工の運びとなった。奉献・拝戴する神酒も当然ウイスキーだ。
朝から霧が立ち込めていたが、起工式が始まる直前から冷たい雨が降り始め、その湿潤な気候がウイスキー原酒の熟成にふさわしいとされる山崎の地らしい情景となった。

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サントリーの山崎蒸溜所は、日本はもとより世界を代表するウイスキー工場である。ヨーロッパのウイスキー工場は小規模で町工場的なものがほとんどであるのに対して、山崎蒸溜所は近代的な生産体制を誇る一大工場である。ウイスキー総合生産工場として仕込から瓶詰までの一貫生産体制をとっていること、「山崎」など工場独自のプレミアムブランド製品をもっていること、充実したPR工場として整備されていること、そして何よりも我が国で初めてウイスキーが作られた発祥の地であることなど、独自の存在感を放つ工場でもある。


近年、ハイボールの人気沸騰によりウイスキー需要が高まっている。しかしながら、ウイスキーはつくり始めてすぐに製品になるわけではない。樽の中で何年のものあいだ熟成された後に製品化される。この点が他の製品と決定的に異なる。
いま樽から出される原酒も何年も前に仕込まれたものであるが、そのときに今のハイボール人気の様相が予定されていたわけではあるまい。今後の成長のために仕込みを更に増やす必要があるというわけだ。当然、排水処理工程も増えることとなる。
ちなみに排水処理は、ウイスキーにかかわらず飲料生産工場にとっては生産工程と同様に重要工程である。「水と生きる」をテーマに環境保全には特に積極的なサントリーであればこそ、増産に加え炭酸ガス排出削減、省エネルギーを狙った機能を持つ排水処理工程に対しても常に厳格な管理が行われる。


何年も前につくられた原酒が今の人気商品を支え、そして何年も先のことを考えて原酒を仕込んでいく。

サントリーホールディングス株式会社・鳥井副社長のお話(http://www.sgc-web.co.jp/factory/voice/suntory.html)にもあるように、改めてウイスキー生産という息の長いモノづくりに建設産業との共通点をなんとなく感じる。

森本 尚孝


  • 2010年2月25日


天井高と階高

お取引先主催の新年交礼会に参加してきた。
会場は、ホテルニューオータニ大阪の大宴会場「鳳凰」であった。
「鳳凰」は西日本最大の宴会場とされており、その面積は720坪に達する。

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どうでもいい話だが、ちなみに大阪にある代表的なホテルの大宴会場の大きさは次のとおりである。

・ホテルニューオータニ大阪 「鳳凰」 面積2376㎡ 天井高7.0m
・帝国ホテル大阪 「孔雀」 面積1665㎡ 天井高7.8m
・リーガロイヤルホテル大阪 「光琳の間」 面積1,360㎡ 天井高5.75m

前二者に比べて、リーガロイヤルホテルの光琳の天井高の低さが目立っており、
中に入ると実際に低く感じる。
ホテル自体は他の二者より格調の高さを感じるだけにいつも残念に思う。

 

ところで、建物にとっての「贅沢」とはなんであろうか?
どちらかというと良い意味で言っているので、「贅沢」というと語弊があるかもしれないが。

私見ながら、建物にとっての最大の贅沢は「天井高」である。
高級な大理石張りの壁や豪華な照明器具がついているより、天井高が高いことが一番の贅沢である。

天井高を高くするためには、階高を高くする必要があるからだ。
階高が高いと単純に工事費がUPするだけでなく、高さの制約から容積率が使い切れず、土地の利用効率が下がるという経済的事情が背景にある。
この「容積率を使いつくす」という原理によって、一時期、階高を抑えて階数を稼いだ分譲マンションが雨後の筍のように量産された。

階高は建物の寿命を決める最大の要因のひとつである。
これらの建物は将来どうなっていくのであろう。

森本 尚孝


  • 2010年1月15日