経営(まつりごと)の章 - 建設業の経営

サントリー山崎蒸溜所

少し前の話だが、2月1日大安、サントリー酒類(株)山崎蒸溜所にて排水処理施設増設工事の起工式が行われた。設備を除く構築物の設計および施工を三和建設にご下命いただき、今般着工の運びとなった。奉献・拝戴する神酒も当然ウイスキーだ。
朝から霧が立ち込めていたが、起工式が始まる直前から冷たい雨が降り始め、その湿潤な気候がウイスキー原酒の熟成にふさわしいとされる山崎の地らしい情景となった。

山崎3.JPG

サントリーの山崎蒸溜所は、日本はもとより世界を代表するウイスキー工場である。ヨーロッパのウイスキー工場は小規模で町工場的なものがほとんどであるのに対して、山崎蒸溜所は近代的な生産体制を誇る一大工場である。ウイスキー総合生産工場として仕込から瓶詰までの一貫生産体制をとっていること、「山崎」など工場独自のプレミアムブランド製品をもっていること、充実したPR工場として整備されていること、そして何よりも我が国で初めてウイスキーが作られた発祥の地であることなど、独自の存在感を放つ工場でもある。


近年、ハイボールの人気沸騰によりウイスキー需要が高まっている。しかしながら、ウイスキーはつくり始めてすぐに製品になるわけではない。樽の中で何年のものあいだ熟成された後に製品化される。この点が他の製品と決定的に異なる。
いま樽から出される原酒も何年も前に仕込まれたものであるが、そのときに今のハイボール人気の様相が予定されていたわけではあるまい。今後の成長のために仕込みを更に増やす必要があるというわけだ。当然、排水処理工程も増えることとなる。
ちなみに排水処理は、ウイスキーにかかわらず飲料生産工場にとっては生産工程と同様に重要工程である。「水と生きる」をテーマに環境保全には特に積極的なサントリーであればこそ、増産に加え炭酸ガス排出削減、省エネルギーを狙った機能を持つ排水処理工程に対しても常に厳格な管理が行われる。


何年も前につくられた原酒が今の人気商品を支え、そして何年も先のことを考えて原酒を仕込んでいく。

サントリーホールディングス株式会社・鳥井副社長のお話(http://www.sgc-web.co.jp/factory/voice/suntory.html)にもあるように、改めてウイスキー生産という息の長いモノづくりに建設産業との共通点をなんとなく感じる。

森本 尚孝


  • 2010年2月25日


「三和建設」は何社ある?

どうでもいい話だが、建設業者の公的なデータの一つとして知られる経営事項審査、いわゆる経審を申請している会社で
三和建設
と名のつく業者は、75業者ほどあるらしい。

株式会社でも、
(株)三和建設
三和建設(株)
の両方がある。
ほかに有限会社や個人事業者も含まれる。

入札で、他の「三和建設」と競合することもあった。
その場合、発注者は「三和建設(◆◆県)」などと区別しておられた。

「三和建設」は、もしかして日本で一番多い建設会社の名前かもしれない。
旧三和銀行をはじめとして、「三和」という名前を冠する企業名は多い。
「三つ」の「和」という概念が、企業のイメージをあらわすキーワードとして用いやすいのかもしれない。

ちなみに、わが三和建設の社名も、
「建設事業は、施主-元請-協力会社の三者の和が重要」
との創業者の言葉に由来している。

森本 尚孝


  • 2009年9月30日


建設会社の付加価値

建サクというインターネットサービスがある。

三重県のkodo.ccという会社の立花哲也という人が考えた。

建設工事請負紹介マッチングサイト建サク

考えるだけでなく、実際に作って動かしているところがすごい。 

ところで、建設会社の強み、あるいは付加価値とは一体なんであろうか?

施工力、技術力、営業力、ブランド、価格競争力、政治力・・・

いろいろありそうだ。

調達力も強みのひとつである。

では、調達力とは何か?

一言でいえば、「良いものを安く調達できる力」ということになるだろう。

調達力は、単に仕入れ先に対してネゴシエーションするスキルが優れているということにはとどまらない。

建設会社においては、たくさんの工事を、仕事のしやすい環境で、安心できる支払いでやってもらうことの積み重ねが、発注者としての信用を生んで、ひいては調達力となって自社に帰ってくる。

 

調達力を高めることは、自社の付加価値を高めることに他ならない。

安く発注できる力が利益(すなわち付加価値)を生むからである。

ただ、安い仕入先業者を知っていることが、その建設会社のコスト競争力であるという認識がこれまでの業界にあったが、はたしてこれはまともな姿なのだろうかと最近疑問に思う。

「単に知っている」だけでなく、前述のとおり「安くて仕事のいい仕入れ先」とつきあい続けられる力こそが、建設会社の付加価値を高めることにつながるべきだ。

 

その意味においては、誤解を恐れずにいえば、優秀な専門業者は特定のゼネコンだけではなく業界全体の財産だと思う。

そしてそのことが、それぞれの建設会社の付加価値を高める唯一の道ではないか。

建サクは、良質な専門業者を業界全体で共有し、ゼネコンの真の付加価値を求めるシステムなのである。

 

森本 尚孝


  • 2009年8月12日


建設業界と建設会社の未来

私が某大手ゼネコンで現場監督をやっていたときの上司が良く言っていた。

建設業界に未来はないが、建設会社に将来はある

 

そもそも、建設業におけるシェア(市場占有率)はどうなっているのだろうか?

自動車業界では、40%を超えるトヨタを筆頭に大手3社で7割以上を占める。

ビール業界では、大手4社でほぼ100%。

だから、キリンとサントリーの統合が大ニュースになる。

 

わが建設業界のシェアはどうなっているのか?

業界全体の市場規模については、いろんな切り口がある。

大手50社~70社の合計値として、12~17兆円とする見方もあるが、かつてとは違って、大手ゼネコン中小ゼネコンの市場へと参入している今となっては、三和建設クラスのゼネコンが大手ゼネコンと競合するケースもある。

このことから、元請建設会社の市場全体規模は、国土交通省が発表している統計データに基づく建設工事元請受注高から約35兆円とすべきであろう。

仮に35兆円を分母としたときの業界シェアはどうなるのか?

業界最大手の鹿島の2009年3月期の連結売上高は約1.9兆円なのでシェア約5%。

いわゆる大手4社の合計は7兆円程度だから、2割のシェアということになる。

前述の自動車やビール業界の実情と比較すると、その差は歴然としている。

 

仮に大手ゼネコンのうち2社が合併するとなれば、確かにビッグニュースではあるし、業界全体への影響は少なからずあるだろうが、大多数の中小ゼネコンへの影響はどれくらいあるかは微妙なところだ。

まして、業界におけるシェア0.02%の三和建設が、売上を倍に増やしても誰が文句を言うだろうか。

悪いのはわが社をとりまく環境ではなく、わが社自身に内在するさまざまな問題にこそあるのではないだろうか。

冒頭に書いた、かつての上司の言葉が思い出される。

 

森本 尚孝

 


  • 2009年8月 5日


小説「ハゲタカ」とかんぽの宿問題

最近、バイアウト・ファンドを取り扱った真山仁の経済小説「ハゲタカ」を読んだ。
主にバブル崩壊後の1997~2004年の日本を舞台としており、いわゆる不良債権問題をとりまく、ハゲタカと呼ばれる外資や日本の銀行を中心とした攻防が描かれている。同名のドラマや映画なども作られており、最近話題となっているようだ。

ハゲタカ(上) (講談社文庫)
ところで最近、日本郵政のかんぽの宿売却が問題視され、総務大臣の更迭にまで発展する一大騒動になった。かんぽの宿がそれまでの投資額に比して非常に安い金額で売却されていることが問題だという。

この「ハゲタカ」を読むと、かんぽの宿売却問題の中身がよく見えるように思う。
小説には、「バルクセール(不良債権の一括売却)」というキーワードが頻繁に登場する。いろんな債権に不良債権を混ぜてまとめて売却するというものだ。
小説の舞台となっている当時、日本の金融機関は大手行を筆頭に軒並み不良債権の早期処理が迫られた。限られた時間とさまざまな政治的制約の中で、各行ともバルクセールによって不良債権を次々と処分していった経緯がうかがわれる。

日本郵政にとって「かんぽの宿」は一種の不良債権のようなものだったのだろう。投資額の元をとるなど到底無理なのはもとより、毎年さらに赤字が増えていくのだから。
住友銀行時代に不良債権処理のエキスパートと言われた西川社長が、当時と同じように、あるいはそれ以上に限られた時間とさまざまな政治的制約の中でかんぽの宿をバルクセールによって処分しようとした心理はよく理解できる。

小説の中でも、バルクセールによって債権が安く買いたたかれていくことよりも、そもそもそのような莫大な不良債権を作ったことが問題視されている。
かんぽの宿の問題の本質も同じところにあることは衆目の一致するところだ。

人はそれぞれの立場によって考え、行動する。
傍目から見れば、なぜこんなやり方をするのかと疑問に思うことでも、当事者にとってみればそれば正しいと信じることはよくあることだ

個人的には、かんぽの宿をもっと高く売ることはできたと思う。
でも、私が日本郵政の社長ならもっと高く売ったといえる自信はない。
まして銀行における経営実績を買われて、あたらしい超巨大金融業のトップに選ばれた人が
採れる選択肢は限られていたのかもしれない。

誰の眼から見ても正しいといえる言動を貫くのは難しいことだ。

森本 尚孝


  • 2009年7月 8日


経営の章について

建設業の経営に関わる考えや情報を書いていきます。

日経新聞のいわゆる産業天気図でも、建設業はいつも雨だが、
本当に建設業の将来ってないのだろうか?

魅力的な建設業のあり方について、考えたことを書き連ねていきます。

森本 尚孝

  • 2009年6月23日