建築工事にまつわる二つの『かんり』
我々のような総合建設業者(いわゆる「ゼネコン」)が、建物を建築する現場で実際どのような仕事をしているのか?という事はあまり知られていない。
漠然とは「建物を造ってるんでしょ?」ということになるが。
原則的にはゼネコンの社員が自ら土を掘ったり、タイルを張ったりなどの作業はしない。
むしろ、してはいけない。
では何をしているのか??
工事担当者は「施工管理」あるいは設計担当者は「工事監理」と言われる『かんり』を日々の業務として実施している。
「施工管理」とはいわゆる現場監督さんの仕事であり、ご下命頂いた建物を、ご要望の品質で工期内に予算内で事故無く環境に配慮して最終的に発注者にお引渡しする仕事である。
具体的には
・搬入された資材や現場に取り付けられた成果品は要求された品質を満足しているか?
・工程に遅れはないか?遅れそうならどう対策を打つか?
・工事用設備に危険な箇所はないか?作業員の体調は万全か?
・現場から搬出される廃棄物は適正に処理されたか?
など、日々数多くの『管理』を実施している。もちろん自分自身で作業などしていると『管理』がおろそかになる訳で、そういう意味からも原則的に施工管理者は自ら作業してはならない。
では「工事監理」とは何か?
建築工事の契約とは、実物が存在していない段階での契約(請負契約)となる。
その根拠となるのが「設計図書」であり、もちろん、これから施工される建物は「設計図書」どおりに施工されなくてはならない。施工者が設計図書(契約)どおりに建物を施工しているか?それを発注者に代わって監理するのが工事監理者であり、一般的には当該建物の図面を作成した設計者が担うことが多い。具体的には
・施工者と打合せを実施し設計図書の説明をおこなう
・施工者が「設計図書」を元に作成した施工のための図面を承認する
・施工者の施工状況を発注者に報告する
・検査や引渡しの立会いを実施する
などなど。
この「施工管理」と「工事監理」は非常に似通った単語であるものの、その業務や立場は全く持って異なるもので確実に区別されるべきものである。我々の業界では会話の中でそれを区別するために「施工管理」を「竹かん」、「工事監理」を「皿かん」などと表現している。
当社のように設計施工を得意としている会社では、その異なる立場の「かんり」者を内包しているわけで、一つの建築現場においてはお互いの「甘え」というものが最大の敵となる。二つの『かんり』者間でお互いの立場を尊重しつつ日々議論を交わすことが顧客満足創造に繋がる。裏を返せば、それが出来ずしての設計施工は評価されない。
松本 孝文
- 2010年8月23日
4つもあるコンクリートの強度
圧縮強度とは文字通り押し潰そうとする力に対する強度であり、鉄筋コンクリート造においてはコンクリートの圧縮強度が構造体全体の強度を決める重要の要素となる。
建築工事標準仕様書JASS5(鉄筋コンクリート工事2003年度版)によれば、一般的に用いられるコンクリートの圧縮強度を表す用語は4種類もある。
①呼び強度
文字通りコンクリートを注文する際に指定する強度。これが一義的に水セメント比に換算される。
つまり、「27Nのコンクリートくれ」と言ったら、工場はこれに見合う水セメント比のコンクリートを作ってもってくる。
②設計基準強度(Fc)
建物の構造的強度(耐震性など)を決定する強度。
つまりFc値は設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。
③耐久設計基準強度(Fd)
Fcとは全く別の観点で、構造体コンクリートの耐久性(すなわちひび割れの抑制度合い)を決める数値。
これを「強度」と呼ぶことが誤解を招く原因でもある。
コンクリートの耐久性は水セメント比の影響が大きい。
呼び強度の欄にも書いたとおり、強度と水セメント比は一義的に決まるために、便宜上、耐久性と強度を関連付けている。
Fd値も設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。
④品質基準強度(Fq)
別々の観点で「基準」となる強度がFcもしくはFdのいずれか大きいほうで決まる。
これに、施工ばらつき補正が加わって品質基準強度Fqとなる。
さらに打設時期によって決まる温度補正を加えたものが「呼び強度」となる。
設計者はもとより施工技術者においても、この4種類のコンクリート強度を理解していないといけない。
温度補正や施工ばらつき補正の考え方については次の機会に。
森本 尚孝
- 2010年7月30日
工事中にゼネコンが倒産したら・・・

車で通りがかりに撮った写真なのでうまく映っていないが、躯体工事中なのに外部足場がなく、次のフロアの躯体工事の様子がむき出しになっている。
場所は中国やベトナムではなく日本である。
したがって、この工事現場は普通の状態ではない。
考えられる仮説は次の通りである。
「躯体工事中に工事を請け負っていたゼネコンが倒産した。工事請負契約やゼネコンの法的処理手続きの中で、外部足場が工事現場から撤収されたが、次のフロアの鉄筋や型枠材はそのまま現場に残されている。」
三和建設では、これまで工事中に他のゼネコンが倒産した仕掛り工事を承継して請け負い完成させて施主に引き渡した実績がいくつかある。
発注したゼネコンが工事の途中で倒産した経験をした施主は多くない。当然のことであろう。そうそうあっては困ることだからだ。
そもそも倒産しないゼネコンに発注しないことが一番だが、それでも万一このような不測の事態が生じた場合は対応が大変難しい。
施主の立場においては、すでに支払っている工事代金や仕掛かり工事(半製品)の権利関係を法的に整理して解決していくことが求められ、当然弁護士に相談して事を進めるべきであろう。
ここでは、新たに他のゼネコンが工事を承継する場合のポイントを説明する。
ここでAという工事の途中にBというゼネコンが倒産して、新たにCというゼネコンがこの工事を承継することになったとしよう。
BがA工事の途中まで実施した出来形部分(仕掛かり工事)を「本件建前」、A工事完成のためにCが新たに請け負う工事を「本件新工事」と呼ぶことにする。
本件新工事が、C社と施主との新たな工事請負契約となり、その契約書に盛り込む内容を決める際に問題なるのが主に次のような点である。
①本件建前の出来高の評価
②本件建前の出来形および出来栄え(見える品質)評価
③本件建前の瑕疵(隠れたる品質上の問題)の責任
④本件建前の瑕疵(隠れたる品質上の問題)に起因する本件新工事の品質などに対する責任
⑤本件新工事へのプロセス(打合せ実績や現場に納品されていない発注済製品)に対する評価
⑥本件建前に伴う仮設資機材の権利
課題はこれ以外にもいろいろある。
個別の内容に関してここで詳述することは避けるが、いずれにしても、本件新工事を承継するのはこういうことに慣れたゼネコンでないと後々に新たな問題を引き起こすことになる。
森本 尚孝
- 2010年5月31日
改修工事の簡易仮囲い
建物の内装リニューアル工事などで、重要な役割の果たすのが仮設の間仕切(仮囲い)である。
とくに、いながらリニューアルを行う場合は、工事範囲が小割になるため仮設間仕切の移設(「盛り変え」という)が頻繁に発生し、そのコストもばかにならない。
次の写真は、某大手ゼネコンS建設のグループ会社が開発したという仮設簡易間仕切である。
ブルーシートを、家庭でもよく使われる突っ張り棒を改良したもので天井と床に固定するというものだ。
突っ張り棒の上部はシートを挟んで固定できるようになっているため、脚立などの足場を使わずにシートによる簡易間仕切を設けることができるとのこと。
出入口も専用のファスナーを貼って簡単につくることができる。
天井や床が完全に密閉されるわけではないため、大量の粉塵が出る仕事は難しいが、盛り変えが頻繁に必要な簡易仮囲いなら、これで十分だろう。
価格は7,000円/本。高い気もするが総合的に考えるとコストダウンにもなるかもしれない。
思わず感心してしまった。
会社の大小や技術の優劣とは関係のない、これぞまさに生活の知恵だ。
- 2009年11月30日
仮設
次の写真は、たまたま通りがかりに目に止まった光景を撮影したものだ。
某大手ゼネコンの建築現場である。
少しわかりにくいが、工事中の建物の一面に外部足場がない。
建物は純然たる鉄筋コンクリート構造で、型枠や鉄筋を組み立てるのに足場が必要なはずだ。
型枠を組んだ後に一旦足場を撤去したのだろうか。
型枠を解体するときや外壁を仕上げるときに、再度足場を組み立てるのだろうか。
結論としては、無足場で鉄筋や型枠を組み立てたとしか考えられない。
この建物のように、外壁がRC造ではなく、梁と柱だけなら足場がなくてもなんとかなるかもしれない。
現場監督を呼んで事情を聞こうとも思ったが、時間がなかったのでやめた。
仮設は文字通り仮に設置するものであり、成果品そのものの価値には直結しない。
少なくできれば、それにこしたことはない。
森本 尚孝
- 2009年11月 5日
伝承することの素晴らしさ
大阪建設業協会で行われたセミナーの翌日に企画されたイベントで岸和田だんじり祭りを観てきた。地元に本社を置く岩出建設株式会社さんがエスコートしてくださった。
名物の「やりまわし」には圧倒された。ハイスピードでコーナー直角にを曲がるあれだ。
たまに転倒や建物への衝突などの事故が報じられるが、間近で見ると4トンもあるというだんじりの激突や転倒など考えると恐ろしさを感じた。
ところがだんじりを曳く者たちは、威勢のいい掛け声を出し、太鼓をたたき、笛を吹き、そんな恐れなど ものともせず全速力でたんじりを曳きコーナーを直角に曲がる。
「大工方」と呼ばれる役割はだんじりの大屋根や小屋根に乗り、団扇を手に華麗に舞う。
町の名を背負った法被を着て、代表として誇りとして、だんじりのてっぺんで目一杯の格好をつける。
本当に誇らしく格好のいい様だ。
町一色がだんじりの熱気に包まれていた。だんじりは力のある若者が中心となって曳かれているが、だんじりの曳き手の中には小学生ぐらいの子どもの姿も多かった。力いっぱい声を出し、全速力でだんじりを曳くために走る子達の姿もとっても勇ましい。大人に負けない誇りを感じる。
大きな危険を伴い、また体力の要るだんじりの曳き手には年齢制限があるようで、まだ年齢に達しない小さな子達は沿道から声援るしかない。
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小さな子達は「大工方」にあこがれているのだろう。団扇を持ち鳴り物に併せて客席で舞っている。 この子達も小さな体に誇らしく町の名を背をっている。
いろいろな方面で若手の継ぎ手不足による日本文化伝承の危機が叫ばれている。
建設業も、とくに大工方は屋号の名を背負った法被を着ていた。その屋号の技術を教えられ受け継ぐことを許された者が背中に名のある法被を着ることができた。誇りと同時に名を背負う責任が職方とその仕事の確かさを支えた。
現在では建設業も若手がその技術を伝承することが少なくなり職方が減ってきている。我々自身が少しずつでも建設業に対する良くないイメージを変えて行かなければと強く感じた。
若手伝承者不足の原因は「最近の若者事情」だけではないと改めて感じたからだ。
岸和田は老若男女だんじりにあこがれる風土が形成されている。
この伝統文化はこの先も子どもや若手によって継承されてゆくことだろう。
森本行則
- 2009年9月24日
外壁窓回りの納まり
まずは下の2枚の写真をごらんいただきたい。
何を撮影したものかお解かりだろうか?
上の写真は外壁に取り付けられたアルミサッシの右上部、下の写真はその左下部を外側から撮影したものだ。
これは現在、三和建設で建設しているある物件の外壁施工状況を示したものだが、この写真の意味するところを説明する。
この建物の外壁は工場や倉庫建築などでよく見られる「角波鉄板」を使う仕様となっている。
写真では石膏ボード貼りが完了し、さらにその上に防水紙を貼り終え、今まさに角波鉄板を貼り付けていこうとする状況である。
角波鉄板はいわゆる「板金屋さん」によって建物の角部分より1枚ずつを(この現場は幅60㎝×長さ約6m)順に貼っていくのだが、サッシ廻りなどは当然ながらその開口に合わせてカットしなければならない。
但し、それだけでは外壁の美観も悪いため、縦横に違う形状の「役物」を加工して取付けるのだが、そもそも「役物」は美観を保つことだけではなく、サッシ廻りからの雨水の浸入を防ぐことが最も大きな役割なのである。
・・・ここでようやく本題を下図とあわせて説明する。
まず(A)の部分にはシールは施さない。ここから浸入した雨水は③の縦見切り縁内を縦滑りし、窓下まで流れ落ちたのち、④の捨板鉄板を伝って1階腰壁水切りより外部に排水される。
尚、左の写真は、④の捨板鉄板がサッシの上にまで伸びていっているが、これは上階部分の(A)からの雨水を、1F腰壁水切りまで伝わるようにしているのだ。
次に(B)の部分についてだが、当該建物はサッシの外部側にアルミ額縁を設けた意匠となっているため③の縦見切り縁とアルミ額縁との間にはシールを施すこととした。
但し、角波鉄板は薄板材であるためその熱伸縮が大きく、鉄筋コンクリート造よりシールが破断しやすい。
もしこの部分のシールが破断すれば、当然ながら建物内部への浸入が予測される。
従ってサッシ部分については、④の捨板を図のように折り曲げ加工し、アルミ額縁との間に挟みこんだシールを充填し(この部分のシールは外部にさらされないため劣化しにくい)、二重の防水処理を施している。
またこのようなサッシの場合、一般的にはアルミ額縁の外側で②のアルミ水切りの長さとなるのだが、シールが破断した場合にあっても④の捨板鉄板を伝って外部へ確実に排水されるように、水切りを延長することとした。
このようにして出来上がった建物を一見して外部からみても、その内部側でどのような工夫がされているかは一般的には知られるよしもなく、設計図に記載されていることすら少ない。
また角波鉄板などは主に金切りバサミでカットされるため、1mmでもハサミが多く入りすぎてしまうと、そこが漏水の弱点となってしまう。
「雨漏れ」=決して建物にあってはならないことである。
使われる資材の性質を知り、意匠としても機能としても満足させる方法とは・・・?
わたしたち三和建設は、これまでの失敗や培った経験をもとに常に前向きに検討し、過去を見直し、将来を見据えて確実に歩み続けます。
それが設計図に記載されていなくても・・・ 人の目に触れないことでも・・・。
相良 敦
- 2009年8月18日
設計施工
同一の業者が、設計業務と施工を一貫して請け負う方式を設計施工(設計施工一貫)という。
これに対して、設計業務と施工を別々の業者が行う方式を設計施工分離という。
設計施工分離においては、まず設計者が定められ、その設計者が作成した設計図書に基づいて
施工者が選定されるという流れが多い。
一貫方式と分離方式のいずれが施主のメリットとなるのか、古くから議論が絶えない。
このテーマに関する議論としては、いわゆる「鹿島論争」が有名だ。
建築士事務所の設計施工を禁止すべきであるとの立場を取ってきた日本建築家協会と、当然設計施工を是とする鹿島守之助・鹿島建設会長(参議院議員、法学博士でもある)との間で繰り広げられた論争である。
今から40年ほど前のことだ。
三和建設では、基本的に設計施工一貫をお薦めすることが多いが、当然ほかの設計事務所の設計監理のもとで、施工のみを請け負う機会も多い。
設計施工一貫か設計施工分離かは、
・計画の背景
・計画内容
・スケジュール
・予算
・施主の想い
・施主の価値観
などによって決まり、一概にどのようなケースでもどちらかが確定的に望ましいとは言えない。
特に大きいのが最後に挙げた「施主の価値観」である。
「より良いものをより安く」作りたいのは当然だが、「より良い」あるいは「より安い」とは何かは
人によって違うのである。
はたして施主にとってよいのは、設計施工一貫?か設計施工分離か?
設計施工のメリットとデメリットに関する議論を次回以降展開していきます。
森本 尚孝
- 2009年7月30日
ある若い現場監督の日記2
- 2009年7月29日
柿食えば・・・法隆寺

- 2009年7月24日
