計事(はかりごと)の章 - 建物の設計

旧日本家屋

先日、赤坂である会の懇親会に出席してきた。

その懇親会会場となったのがここ。

【白碗竹快樓 別館 菜根譚】

http://www.kiwa-group.co.jp/restaurant/a100104.html

「菜根譚」とは、17世紀の中国・洪自誠の著書にある

「人よく菜根を咬みえば、即ち百事なすべし」

すなわち「堅く筋が多い菜根を噛み締めてこそ、真の味わいがわかる」といった意味の込められた店名。

以前にも一度行ったことがあったのだが、赤坂見附の駅から徒歩数分の路地裏にあり、旧い日本家屋をリノベーションして店舗利用している。

店構えは割にシンプルでなんとなく「隠れ家」といった印象

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扉を開け店に入ると土間に並べられたテーブル・椅子なんとも言えない雰囲気が。 g822617ps4.jpg 

2階に上がると間仕切りを取り払った個室や6名程度が入れる個室が。。。

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個室の写真でもわかるように席の間に柱がある。

普通の飲食店では考えられないが、この店はあまり気にならない。それどころかなんとなく愛着までもててしまう。。。

古民家再生なんていう言葉をよく耳にするが、利用者・施工者が工夫をこなしリノベーションすることで、互いの良い点が導きだせるのではないかと再認識した。

食事を終え、ふと見上げるとこんな風景が。。。

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 普通ならミスマッチだが、なんとなくマッチしていて目まぐるしく変わりゆく都市開発の中の「隠れ家」を再認識させられた。

ちなみに・・・ここの麻辣鍋は辛いもの好きにはたまらない。。。P1070130.jpg

森本 育宏


  • 2010年2月 8日


鉄は引張って使え

鉄はコンクリートと並び代表的な建築構造材料である。今回はこの鉄の有効な使い方について私見を述べる。

断面力スケッチ.jpg

建築構造設計では柱・梁などの部材を1本の棒として考える。その棒に働く力としては、曲げ力・圧縮力・引張力などがある。

鉄はコンクリートと比べて強度が高いため(おおざっぱに言えば一桁違う)、部材のプロポーションはスリムになる。そのため、部材を圧縮材として使う場合(たとえば柱)には座屈に注意する必要がある(座屈とは、力を加えていくと突然これまでとは違う方向に変形する現象を言う)。ひとたび座屈が生じると、部材は本来持っている断面性能を十分に発揮できないばかりか、これまで負担していた力を突然負担できなくなり、建物全体にとっても非常に好ましくない状態となる。よって、座屈を防ぐために部材のプロポーションを太くするか、座屈を拘束する部材を新たに設ける必要がある。

座屈スケッチ.jpg

曲げ材として使う場合(たとえば梁)にも断面内に圧縮力が生じるので、やはり座屈に注意する必要がある。さらに同一断面内で圧縮力と引張力が反転するため、つまり力がゼロになる部分が生じるため、断面を十分に活用しているとは言い難い。

一方、引張り材として使う場合(たとえば引張筋かい)には座屈の心配は一切なく断面性能を十分に発揮できる。

以上より、鉄は引張って使うのが最も「うまい」使い方と言える。このことを端的にあらわした建物がイギリスのノーマン・フォスターという建築家の手がけた「英国ルノー社部品配送センター」である。鉛直荷重、地震荷重、風圧力に対して引張材を多用して抵抗する構造形式である。ちなみにノーマン・フォスターは他にも「香港上海銀行」、「ハーストタワー」など構造フォルムを前面に出した建物を多数手がけている。

英国ルノー.jpg

ノーマン・フォスターのようにとはいかないまでも、構造部材を少しでも「うまく」使って設計したいものである。

 

谷 直人





  • 2010年1月29日


建築に用いる素材

昨年のことだが、SHIBUYA-AXというライブハウスに行った。

SHIBUYA-AX 外観写真

目的はライブの観賞だったのだが、少し早く着いたので建物を眺める時間があった。

設計はみかんぐみという建築にとらわれず幅広くデザインを手掛けるクリアエイター集団によるものだが、面白い仕上げを見つけた。

ホワイエ(入口からホールに入るまでの広い空間)の天井にCD(コンパクトディスク)貼りの仕上げが施されている。

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規則正しく綺麗に貼られていたので一見気付かなかったが、まぎれもなくCD貼仕上げというヤツだ。

こういった仕上げは遊び心があって面白い。

ところで施工業者は大量のCDを建材として調達したのだろうか?

森本行則


  • 2010年1月18日


天井高と階高

お取引先主催の新年交礼会に参加してきた。
会場は、ホテルニューオータニ大阪の大宴会場「鳳凰」であった。
「鳳凰」は西日本最大の宴会場とされており、その面積は720坪に達する。

鳳凰の間.JPG

 

 

 

 

 

 

 

どうでもいい話だが、ちなみに大阪にある代表的なホテルの大宴会場の大きさは次のとおりである。

・ホテルニューオータニ大阪 「鳳凰」 面積2376㎡ 天井高7.0m
・帝国ホテル大阪 「孔雀」 面積1665㎡ 天井高7.8m
・リーガロイヤルホテル大阪 「光琳の間」 面積1,360㎡ 天井高5.75m

前二者に比べて、リーガロイヤルホテルの光琳の天井高の低さが目立っており、
中に入ると実際に低く感じる。
ホテル自体は他の二者より格調の高さを感じるだけにいつも残念に思う。

 

ところで、建物にとっての「贅沢」とはなんであろうか?
どちらかというと良い意味で言っているので、「贅沢」というと語弊があるかもしれないが。

私見ながら、建物にとっての最大の贅沢は「天井高」である。
高級な大理石張りの壁や豪華な照明器具がついているより、天井高が高いことが一番の贅沢である。

天井高を高くするためには、階高を高くする必要があるからだ。
階高が高いと単純に工事費がUPするだけでなく、高さの制約から容積率が使い切れず、土地の利用効率が下がるという経済的事情が背景にある。
この「容積率を使いつくす」という原理によって、一時期、階高を抑えて階数を稼いだ分譲マンションが雨後の筍のように量産された。

階高は建物の寿命を決める最大の要因のひとつである。
これらの建物は将来どうなっていくのであろう。

森本 尚孝


  • 2010年1月15日


図面を「引く」から「クリックする」へ

 建築物に限らず物を作るには、その完成した形を図画によって表現しそれを元に製作に取り掛かる。図画は何も紙に書いたものだけではなく、優秀な人は頭の中のイメージで作成できる。芸術作品などがこれにあたるが、下書きやレプリカを作る人もいる。

 建築物は、大小を問わず複雑かつ携わる人が大勢なので最終形を皆に知らしめる為に表現された図画は必須となり、これを設計図面と言う。この図面は基本計画図(ガウディのサグラダ・ファミリアのように模型の場合も)⇒詳細計画図⇒実施設計図⇒施工図、と言った流れで全体から部分へ、概略から詳細へと必要に応じて細部へ展開されていき、それに基づいておのおのの部位が作成されていきそれら
が集まり組み合わされてひとつの建築物が出来上がる。

942494a4.jpg その設計図面を書く事を「図面を引く」と表現する。語源は定かではないが「文字を書く」・「絵を描く」・「線を引く」から「図面を書く」⇒「線を引く」⇒「図面を引く」となったと言われる。又、昔大工が木材に直接墨を引いて加工した事からとも言われる。
 又、その道具にも変遷があって、如何に簡便に平行線や垂線が引けるかが問われた。近年比較的長い間使われてきた安価な器具が左の製図板+T定規+三角定規でこの道具を使い鉛筆等で製図用紙に直接線を引いた。

set_EANA1(1).jpgのサムネール画像のサムネール画像
 これが少し高度になり作図スピードをあげる為に考案されたのが、右のドラフターである。しかし基本的には、製図用紙に筆記用具で直接線を引くことに根本的な変化は無く、個人の資質によって図面の見栄えに大きく差が出る代物であった。
 又、計画に変更等が生じれば、図面を書き直すか又は変更部分を消去して加筆するしか方法が無く、それらに大きな労力が割かれていた。
 
 この点を飛躍的に改善した作図方法がプロッターを含めたコンピューターによる作図支援システムのCADと称されるものだ。1960年代と比較的古くから有ったシステムであるが、パーソナルコンピューターの爆発的普及により、各種のCADソフトが開発され、現在では殆ど全ての設計図面がこれにより作成されている。
CADは一般にComputer Aided Design、Computer Assisted Drawing の略語)

 このCADが今までの作図方法と大きく進化した点は、主に以下の点だ
 1.コピー機能により類似図面の作成が容易
 2.寸法をデータ処理する為、変更が容易
 3.各種の計算や解析が可能に
 4.デジタル出力により、正確な作図が容易

 しかし、何よりも大きく変わったのは、筆記用具がまったく不要になった事である。この事は「図面を引く」と言う行為が無くなり「図面をクリックする」と言う行為に取って代わられたことで、個人の作図技術(決して設計技術では無い)にかかわらず、ある一定レベルの見栄えの図面を作る事が出来る様になった事である。いずれ近い将来「この計画の図面をクリックしてくれる」と言う会話が成り立つかもしれない。

 読者諸氏の中で、よくパソコンを利用されている方は、JWWと言うフリーCADソフトが有るので、いじってみる事を勧める。自身が思い描く住宅やビルなどを自在にクリックしてみるもの面白いと思う。

川 端 康 司

 

 

 







  • 2010年1月13日


村野藤吾の照明器具

昨年のクリスマスの話。

あるお客様からの依頼で、「村野藤吾作の建物」に巡り合った。
建築に携わる者としては興奮した。

お客様からの依頼は「この建物に設置してある照明器具の取り外し」である...
照明器具を外すだけか...なんだかピンとこなかった。

聞くと80年前に建てられたこの建物の照明器具も村野自身がデザインしたものらしく、世の中に二つとして同じものは無いのだとか...。


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実物を見るまではそのすごさがわからなかったが、どれをとっても、「確かにすごい!」、「見たことがない!」の連続であった。
このような高価で貴重なものを取り扱うことのリスクの高さが頭によぎったが、「ぜひ、なんとかしたい」というお客様の熱意に負けお手伝いをすることにした。
かなりの緊張感の中、お客様を初めすべての関係者がみんなで作業をし、すべての照明器具が無事に撤去できたときの達成感と感動は今も鮮明に憶えている。

お客様にとって、僕にとってまた関係者にとって最高のクリスマスプレゼントであった。

川口 秀夫

 


  • 2010年1月 7日


「建築物」とは?(後編)

前回は、「建築物」かどうか判断に迷うものを列記した。今回は、私見と経験に基づく判断を述べる。

   既製品の物置は?

① 物置.jpg

置にも大小様々あるが、判断基準は人が中に入れるかどうかであると考え

る。扉を開けて棚がすぐある物置は「建築物」ではなく、人が中に入って収納

するタイプの物置は「建築物」であると判断する。


   カーポートは?

② カーポート.jpg

増築で設置するときに確認申請され

ていないケースが多くあると想像されるが、紛れもなく「建築物」である

                         

   居住できる船舶は?

③ 船舶.jpg

土地に定着しないため「建築物」ではないと判断する。


                        

   開閉式テントの上屋は?

④ 開閉式テント.jpg

屋根が固定式でないにせよ閉めているときは屋根がある。よって「建築物」であると判断する。


     


⑤ 犬小屋.jpg

   犬小屋は?

仮にやや大きめの犬小屋で人が何とか中に入れるとしても、本来の用途は犬の家なので「建築物」ではないと判断する。ただし、畜舎と呼べる程度の大きさになると当然「建築物」になる。


   ツリーハウスは?

⑥ ツリーハウス.jpg

ハウスと言うからには人が中に入って使用できるものである。また、土地に定着されているので「建築物」であると判断する。「建築物」である以上、土台となる木は建築基準法の構造関係規定に適合していなければならない(実際は難しいと思うが・・・)。


   キャスター付きの上屋は?

⑦ キャスター付上屋.jpg

キャスター付きなので移動できるが、実際の使用上は「土地に定着」した状態で使用することが想像できるので「建築物」であると判断する。ただし、蛇腹式で収納できる庇のようなものは「建築物」ではないとの判断もある。


   キャンピングカーは?

⑧ キャンピングカー.jpg

土地に定着しないため「建築物」ではないと判断する。



   コンテナーハウスは?

⑨ コンテナ.jpg

地方のカラオケBOXなんかで見られるが、これも土地に定着されているため「建築物」であると判断する。



   洞窟は?

⑩ 洞窟.jpg

自然にできたものまたは自然を利用して造ったものであり「建築物」ではないと判断する。



   ビーチパラソルは?

⑪ ビーチパラソル.jpg

柱と屋根があるという点では「建築物」と言えなくもないが、通常一時的な使用であり、安全性でもさほど問題ないというのが実情であると考える。よって「建築物」ではないと判断する。


   キャンプ用テントは?

⑫ キャンプ用テント.jpg

これも柱(骨組)と屋根があるという点では「建築物」と言えなくもないが、上記と同様の理由で「建築物」ではないと判断する。ただし、継続的に生活する場合は、微妙な判断になると思われる。



以上の他にも判断に迷う事例はたくさんある。その際には特定行政庁に相談しケースバイケースで判断することになる。建築基準法は、建築物を使用する人々の生命・健康・財産を保護するための法律である。逆に考えれば、「放置しておくとこれらを脅かしてしまう構造物は『建築物』である」という判断基準もあるのではないだろうか。

谷 直人

  • 2009年12月28日


「建築物」とは?(前編)

設計者は「建築物」を設計するにあたって建築基準関係規定を順守しなければならない。そして、作成した設計図書を役所または検査機関に提出して、確かに建築基準関係規定に適合していることを確認してもらう必要がある。これがいわゆる確認申請制度である。

ここで、「建築物」とは何かを考えてみる。建築基準法第2条第1項で「建築物」という用語が定義されている(以下、建築基準法の抜粋)。

土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

着目すべきは「土地に定着する」と「屋根及び柱若しくは壁を有するもの」という部分である。


世の中には、「建築物」かどうか判断に迷うものがたくさんある。

たとえば、

  既製品の物置は?

  カーポートは?

  居住できる船舶は?

  開閉式テントの上屋は?

  犬小屋は?

  ツリーハウスは?

  キャスター付きの上屋は?

  キャンピングカーは?

  コンテナーハウスは?

  洞窟は?

  ビーチパラソルは?

  キャンプ用テントは?


次回、私見と経験に基づく判断を述べる。


谷 直人




  • 2009年12月 2日


建物と緑化

屋上緑化、壁面緑化など建物を緑化する技術は進歩している。

少し前までは屋上緑化なら防水や土や植物の重さの問題で、緑化の実現は簡単ではなかった。

サントリーはパフカルという独自に開発した新素材を用いて「ミドリエ」として屋上緑化や壁面緑化を簡単に実現できる方法を提案している。

三和建設の本社にもミドリエの壁面緑化の技術を活かし(花のかべ)を取り入れている。

垂直に植物を据えるとき困難な問題のうちの一つが水を均一に与えることだろう。パフカルは一般の保水スポンジとは異なり、高さがあっても上部から下部までほぼ均一に水分と空気のバランスを保持し続けられることができる。これによって垂直な面でも均一に水を与えることができるのだ。

写真は東急二子玉川駅ホーム内の待合室壁面に環境改善の一環として期間限定で施されているものだ。

同じ二子玉川にマロニエコートと呼ばれる建物が完成した。建築家・隈研吾氏が設計した建物は、「街」から「自然」へと移り変わる開放感がテーマだということで常緑のツタをからませたグリーンイーブス(緑のひさし)が特徴的だ。

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これは実際の竣工間もないマロニエコートの写真だが、ツタは成長し近いうちに(緑のひさし)が現れ設計者の意とした「街」から「自然」に移り変わるというのはこういうことなのだろう。

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建物の緑化は本当に身近になってきた。 自然環境への配慮も緑化のテーマだが、身近なテーマは我々ヒトへの環境改善にも効果を発揮してくれるということだろう。

森本行則


  • 2009年11月24日


デザインと機能

先日、東京の青山にある会社を訪問した。
その会社が入居しているビルの話。

次の写真は、エントランスを外から写したものだ。

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強化ガラス製のエンジンドアから入ったがエレベータがどこにあるのか一瞬わからなかった。
実は入って左側にあるのがエレベータだった。

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このエレベータはシースルー型で、エレベータの扉もほとんどガラスなので、エントランスホールに入った瞬間はエレベータではなく窓のような錯覚を受けた。

下の写真はエレベータシャフトを外部から写したもの。

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これはエレベータ内にある階数ボタンのパネル。
個人的には好きだ。

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エレベータの中も外も大変しゃれていたが、エントランスに入った瞬間どこにエレベータがあるかわからない。
ただ、オフィスビルなので入る人のほとんどはリピーターとなり、この不便もたいしたことはないのかもしれない。

デザイン性と機能性のバランスを考える上でおもしろい事例だった。

 

森本 尚孝


  • 2009年10月22日