庭園迷路と建築のイメージ
もう15年以上前になるが英国を訪れた事が有る。そのロンドン郊外にあるテムズ川沿いのハンプトン・コート宮殿を訪れた。広大な宮殿は、その内外とも公開されており、内部の荘厳さと広大な庭園の素晴らしさ(特に花々)に感動を受けた事を覚えている。
余談だが、その帰路はテムズ川を3,4時間かけてクルーズでウエストミンスターまで戻ったのだが川から見る風景は陸からのそれとは違って、新鮮な発見が有って大変面白かった。日本でも隅田川など各地にクルーズが有るので試される事を勧める。
さて、そのハンプトン・コートの庭園の中に上の様な世界的に有名な庭園迷路が有る上空からの写真を見る限りにおいては、それを制覇する事にさほどの困難はないと言うより平易である。しかし、左のようにその中に一旦入るとそこから出る事は容易ではない。要所要所に係員が居て、出口を教えてくれる位だ。それは、全体がイメージできず通路と壁だけで方向感覚もなくなり能がパニックを起こすからだろう。私は何とか独力で脱出したが、相当な苦労と言うよりかなりの距離を歩いた記憶が有る。
それとそれと同じような事が建築の設計図で起る。一般に設計図は次の構成からなっている。
① 仕様書(SPECIFICATION)
② 平面図(PLAN)
③ 立面図(ELEVATION)
④ 断面図(SECTION)
⑤ 詳細図(DETAIL)
⑥ 各種設備図(EQUIPMENT)
設計者はこれらに自身の意図を表現し、施工技術者はそれを読み取り具現化していく。お互い優れた技術者では有るのだが、図面には表現しきれない不明確な部分が多数存在する事がまま有る。この場合施工技術者は、設計者にその意図を確認したり調整したり、又施工図と称する図面を作成する(施工図については、本ブログ内を参照)。
とまあ、技術者同士の話ではそれで済むのだが、建築の素人たる建築主が自身の発注した建築物を図面からのみイメージする事は非常に難しい。特に完成した時に自身の希望とかけ離れていては、一大事業も水泡に帰する。
そこで、設計者や施工者は計画や施工中から下の様な、内外パース(左)や模型(右)などを作成し、少しでも建築主がイメージし易い様に注力する。又、コンピューターグラフィックスの技術を駆使した疑似体験ソフトもある。
近い将来、今はやりの3D画像ですべてがイメージできるソフトに発展していくであろう。
三和建設においては、お客様の夢や希望が具現化で来るよう、初面談から竣工引き渡し・経年メンテナンスまで、詳細なプレゼンテーションと供に密着した営業方針を敷いている。相談事や疑問の解決への橋渡しに利用していただければと思う。
又、最先端の省エネ技術や環境ソリューションについても、豊富な技術の蓄積が有るので気軽にお声掛け頂きたい。
川 端 康 司
- 2010年8月31日
建築工事にまつわる二つの『かんり』
我々のような総合建設業者(いわゆる「ゼネコン」)が、建物を建築する現場で実際どのような仕事をしているのか?という事はあまり知られていない。
漠然とは「建物を造ってるんでしょ?」ということになるが。
原則的にはゼネコンの社員が自ら土を掘ったり、タイルを張ったりなどの作業はしない。
むしろ、してはいけない。
では何をしているのか??
工事担当者は「施工管理」あるいは設計担当者は「工事監理」と言われる『かんり』を日々の業務として実施している。
「施工管理」とはいわゆる現場監督さんの仕事であり、ご下命頂いた建物を、ご要望の品質で工期内に予算内で事故無く環境に配慮して最終的に発注者にお引渡しする仕事である。
具体的には
・搬入された資材や現場に取り付けられた成果品は要求された品質を満足しているか?
・工程に遅れはないか?遅れそうならどう対策を打つか?
・工事用設備に危険な箇所はないか?作業員の体調は万全か?
・現場から搬出される廃棄物は適正に処理されたか?
など、日々数多くの『管理』を実施している。もちろん自分自身で作業などしていると『管理』がおろそかになる訳で、そういう意味からも原則的に施工管理者は自ら作業してはならない。
では「工事監理」とは何か?
建築工事の契約とは、実物が存在していない段階での契約(請負契約)となる。
その根拠となるのが「設計図書」であり、もちろん、これから施工される建物は「設計図書」どおりに施工されなくてはならない。施工者が設計図書(契約)どおりに建物を施工しているか?それを発注者に代わって監理するのが工事監理者であり、一般的には当該建物の図面を作成した設計者が担うことが多い。具体的には
・施工者と打合せを実施し設計図書の説明をおこなう
・施工者が「設計図書」を元に作成した施工のための図面を承認する
・施工者の施工状況を発注者に報告する
・検査や引渡しの立会いを実施する
などなど。
この「施工管理」と「工事監理」は非常に似通った単語であるものの、その業務や立場は全く持って異なるもので確実に区別されるべきものである。我々の業界では会話の中でそれを区別するために「施工管理」を「竹かん」、「工事監理」を「皿かん」などと表現している。
当社のように設計施工を得意としている会社では、その異なる立場の「かんり」者を内包しているわけで、一つの建築現場においてはお互いの「甘え」というものが最大の敵となる。二つの『かんり』者間でお互いの立場を尊重しつつ日々議論を交わすことが顧客満足創造に繋がる。裏を返せば、それが出来ずしての設計施工は評価されない。
松本 孝文
- 2010年8月23日
4つもあるコンクリートの強度
圧縮強度とは文字通り押し潰そうとする力に対する強度であり、鉄筋コンクリート造においてはコンクリートの圧縮強度が構造体全体の強度を決める重要の要素となる。
建築工事標準仕様書JASS5(鉄筋コンクリート工事2003年度版)によれば、一般的に用いられるコンクリートの圧縮強度を表す用語は4種類もある。
①呼び強度
文字通りコンクリートを注文する際に指定する強度。これが一義的に水セメント比に換算される。
つまり、「27Nのコンクリートくれ」と言ったら、工場はこれに見合う水セメント比のコンクリートを作ってもってくる。
②設計基準強度(Fc)
建物の構造的強度(耐震性など)を決定する強度。
つまりFc値は設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。
③耐久設計基準強度(Fd)
Fcとは全く別の観点で、構造体コンクリートの耐久性(すなわちひび割れの抑制度合い)を決める数値。
これを「強度」と呼ぶことが誤解を招く原因でもある。
コンクリートの耐久性は水セメント比の影響が大きい。
呼び強度の欄にも書いたとおり、強度と水セメント比は一義的に決まるために、便宜上、耐久性と強度を関連付けている。
Fd値も設計プロセス上の数値であって、実際のコンクリートの強度とは異なる。
④品質基準強度(Fq)
別々の観点で「基準」となる強度がFcもしくはFdのいずれか大きいほうで決まる。
これに、施工ばらつき補正が加わって品質基準強度Fqとなる。
さらに打設時期によって決まる温度補正を加えたものが「呼び強度」となる。
設計者はもとより施工技術者においても、この4種類のコンクリート強度を理解していないといけない。
温度補正や施工ばらつき補正の考え方については次の機会に。
森本 尚孝
- 2010年7月30日
既存不適格建築物は適法
建築当時、建築基準法又はこれに基づく命令や条例の規定等に適合した建築物が、ある時法律が改正されその建築物の全体又は一部が適合しなくなる場合がある。このような建築物を法律用語で「既存不適格建築物」という。
ちなみに構造関係の改正履歴は下記の通りである。
1950年(昭和25年)建築基準法制定
建築基準法施行令に構造基準が定められ、許容応力度設計が導入された。
1971年(昭和46年)建築基準法施行令改正
1968年の十勝沖地震を教訓に、鉄筋コンクリート造の柱のせん断補強筋規定が強化された。
1981年(昭和56年)建築基準法施行令大改正 新耐震設計基準
1978年(昭和53年)の宮城県沖地震後、耐震設計法が抜本的に見直され耐震設計基準が大幅に改正され、現在の新耐震設計基準が誕生した。
この、新耐震設計基準による建物は、阪神大震災においても被害は少なかったとされている。
これを境に、「1981年昭和56年以前の耐震基準の建物」や「1981年昭和56年以降の新耐震基準による建物」といった表現がされるようになる。
2000年(平成12年)建築基準法及び同施行令改正
性能規定の概念が導入され、構造計算法として従来の許容応力度等計算に加え、限界耐力計算法が認められた。
2007年(平成19年)建築基準法及び同施行令改正
耐震偽装問題をうけての法改正。罰則が強化され、専門家による構造計算の審査(ピアチェック)が導入された。
「既存不適格」という言葉からはいかにも法に適していないようなイメージを受けるが、増改築等が行われない限り不適合のまま存在することが建築基準法により許容されている。つまり、「既存不適格建築物」の存在は「適法」なのである。
谷 直人
- 2010年7月15日
アーケードと建築
近鉄奈良駅を出て賑わいのある東向商店街という名前のアーケード街を南に向かって歩いていった。
いわゆる全蓋式アーケードが設置されている。突然の雨だったので重宝した。
アーケード街の出口付近で、他の店と趣の違う景色が西側に現れた。
南都銀行本店である。
商店街の南端に位置し、その東側にアーケードが付置されているという格好になる。

アーケード街を出て南側にまわるとようやく建物の全容が明らかになる。
イオニア式の列柱が重厚さをかもしだすこの建築は1926年に建てられたものだという。
当然アーケードの施工はその後のことであろう。


ここで思ったのである。アーケードをこの建物の北端で止めるという選択肢はなかったものか。
当然、銀行の東向い側の店舗の事情もあるから、南都銀行の意向だけでは決まらないが。
銀行は店舗でもあるから、入口にアーケードがあるほうが利用客の利便性は増す。
しかしアーケードが邪魔で、古都奈良には珍しい洋式建築の全容は見えない。
この場合、正面である南側や西側は上まで見渡せるので問題は少ないが、あくまで東側は見えない。
アーケードと建築との関係性を考えさせられる。
森本 尚孝
- 2010年6月 8日
構造形式と耐震性について
- 2010年5月18日
ドアクローザ
「ドアクローザ」とは開けられた扉を自動的に閉める働きをする装置のことをいう。
開けられた扉をバネの復元力で閉めるというメカニズムによるものが多い。
玄関ドアのように常時あけっぱしにならないようにしておくことが好ましい扉に用いられる。
ちなみに「ドアクローザ工業会」(http://www.dcma.jp/)なるものまである。
写真は手作りのドアクローザである。
みにくい画像だが、重力を利用して扉を強制的に閉鎖するシステムになっていることがわかる。
森本 尚孝


- 2010年5月12日
三匹の子ブタと建築構造
まことにどうでもいい話だが、私の5歳になる息子が「三匹のこぶた」の歌を歌っていた。「三匹のこぶたのいっぴきが~♪」という歌いだしで始める。初めて聞いた歌で、あまり童謡っぽくない、どこか異様なメロディーであった。
「三匹のこぶた」がどこの国の話か知らないが、おそらく欧米であろう。
一匹目のこぶたはわらで、二匹目のこぶたは木で、それぞれ家を作ったが、いずれも狼の息によって吹き飛ばされる。
そして三匹目のこぶたはレンガで家を建て、狼の攻撃に耐えたという話である。
建物に求められる要件について専ら耐風性に焦点が当てられており、レンガ造を良しとしているという点で、この話は極めてヨーロッパ的である。わが国ならこうはいかない。
わが国においては、大正12年の関東大震災によってレンガ造の建物が軒並み崩壊し、以来、組積造は耐震性が低いとされ、その後の建築物にはあまり採用されなくなった。
建物と国柄のかかわりを象徴する話といえよう。
組積造を含む建築構造と耐震性の関係性については、専門家である三和建設の設計部長にバトンタッチしますのであとはよろしく。
森本 尚孝
- 2010年4月21日
権八西麻布店
小泉首相がブッシュ元米大統領をもてなした場所として知られる権八西麻布店に連れて行ってもらった。
わりに落ち着いたエントランスを入ると、いきなり大空間が広がる。中央部は完全な吹き抜けで2階部分が回廊式になっており、劇場を思わせるつくりである。
天井を見上げるとPC風の梁が細かく配されている。20mはあろう大スパンが何が構成されているか興味深かったが、今回はそこまで注意深く見る機会がなかった。
いずれにせよ大変効果的な設計で、肝心の料理より建物にばかり気をとられてしまった。
森本 尚孝



- 2010年3月31日
建物の圧密沈下について
建物が沈下する場合、下記のような原因が考えられる。
1) 地下資源の採取
2) 地下水の過剰な揚水
3) 埋立て地盤の圧縮
4) 地盤の掘削による地盤変位
5) 直接基礎の即時沈下
6) 直接基礎の圧密沈下
1)~4)の原因による場合は、比較的広い範囲の地域に地盤沈下が生じる。5)および6)の原因による場合は、個々の建物または隣接する建物といった部分的な範囲に地盤沈下が生じる。ここでは個々の建物を計画する際に注意すべき5)および6)、とりわけ長期に渡って沈下が進行する6)の圧密沈下について取り上げたい。
即時沈下とは、建物重量が地盤に加わるのとほぼ同時に生じる沈下であり、力を加えるとバネが縮むようなイメージである。一方、圧密沈下とは、軟弱な粘土層中の水分が長時間に渡って絞り出されることにより沈下する現象である。
圧密沈下の特徴は、数年、場合によっては10年以上沈下が進行し続け、総沈下量が数十センチにもおよぶケースがあるということである。不等沈下も伴う場合は、耐震性などの安全面でも建物の使用面でも深刻な問題が生じる。
では、どのような条件の地盤で問題となる圧密沈下が生じるのか?計画地もしくはその付近の土質柱状図をチェックして、①そこそこの層厚(2~3m以上)の粘土層があり、②その粘土層のN値が0~3程度と小さく、③その粘土層が地下水位以下にある場合は要注意である。このようなケースでは、地質調査の項目の中に「圧密試験」を追加して机上でしっかりと検討し、適切な基礎工法を選択することが肝要である。
しかしながら、小規模建物でかつ地盤に関するデータが不十分である、または設計者自身の技術不足などの理由により不適切な基礎形式が選択されることもありうる(確認申請で審査されるとは限らない)。
建物を継続的に使用している状態で日々沈下が進行することは、入居者・オーナーにとっては大変不安に感じることである。また、経済的にも大変な損失を被りかねない。
設計者自身は言うまでもないが、建築依頼主にとっても圧密沈下に対する知識は身につけておいて損はない知識である。
谷 直人
- 2010年3月24日
