図面を「引く」から「クリックする」へ

 建築物に限らず物を作るには、その完成した形を図画によって表現しそれを元に製作に取り掛かる。図画は何も紙に書いたものだけではなく、優秀な人は頭の中のイメージで作成できる。芸術作品などがこれにあたるが、下書きやレプリカを作る人もいる。

 建築物は、大小を問わず複雑かつ携わる人が大勢なので最終形を皆に知らしめる為に表現された図画は必須となり、これを設計図面と言う。この図面は基本計画図(ガウディのサグラダ・ファミリアのように模型の場合も)⇒詳細計画図⇒実施設計図⇒施工図、と言った流れで全体から部分へ、概略から詳細へと必要に応じて細部へ展開されていき、それに基づいておのおのの部位が作成されていきそれら
が集まり組み合わされてひとつの建築物が出来上がる。

942494a4.jpg その設計図面を書く事を「図面を引く」と表現する。語源は定かではないが「文字を書く」・「絵を描く」・「線を引く」から「図面を書く」⇒「線を引く」⇒「図面を引く」となったと言われる。又、昔大工が木材に直接墨を引いて加工した事からとも言われる。
 又、その道具にも変遷があって、如何に簡便に平行線や垂線が引けるかが問われた。近年比較的長い間使われてきた安価な器具が左の製図板+T定規+三角定規でこの道具を使い鉛筆等で製図用紙に直接線を引いた。

set_EANA1(1).jpgのサムネール画像のサムネール画像
 これが少し高度になり作図スピードをあげる為に考案されたのが、右のドラフターである。しかし基本的には、製図用紙に筆記用具で直接線を引くことに根本的な変化は無く、個人の資質によって図面の見栄えに大きく差が出る代物であった。
 又、計画に変更等が生じれば、図面を書き直すか又は変更部分を消去して加筆するしか方法が無く、それらに大きな労力が割かれていた。
 
 この点を飛躍的に改善した作図方法がプロッターを含めたコンピューターによる作図支援システムのCADと称されるものだ。1960年代と比較的古くから有ったシステムであるが、パーソナルコンピューターの爆発的普及により、各種のCADソフトが開発され、現在では殆ど全ての設計図面がこれにより作成されている。
CADは一般にComputer Aided Design、Computer Assisted Drawing の略語)

 このCADが今までの作図方法と大きく進化した点は、主に以下の点だ
 1.コピー機能により類似図面の作成が容易
 2.寸法をデータ処理する為、変更が容易
 3.各種の計算や解析が可能に
 4.デジタル出力により、正確な作図が容易

 しかし、何よりも大きく変わったのは、筆記用具がまったく不要になった事である。この事は「図面を引く」と言う行為が無くなり「図面をクリックする」と言う行為に取って代わられたことで、個人の作図技術(決して設計技術では無い)にかかわらず、ある一定レベルの見栄えの図面を作る事が出来る様になった事である。いずれ近い将来「この計画の図面をクリックしてくれる」と言う会話が成り立つかもしれない。

 読者諸氏の中で、よくパソコンを利用されている方は、JWWと言うフリーCADソフトが有るので、いじってみる事を勧める。自身が思い描く住宅やビルなどを自在にクリックしてみるもの面白いと思う。

川 端 康 司

 

 

 







  • 2010年1月13日