小説「ハゲタカ」とかんぽの宿問題
最近、バイアウト・ファンドを取り扱った真山仁の経済小説「ハゲタカ」を読んだ。
主にバブル崩壊後の1997~2004年の日本を舞台としており、いわゆる不良債権問題をとりまく、ハゲタカと呼ばれる外資や日本の銀行を中心とした攻防が描かれている。同名のドラマや映画なども作られており、最近話題となっているようだ。

ところで最近、日本郵政のかんぽの宿売却が問題視され、総務大臣の更迭にまで発展する一大騒動になった。かんぽの宿がそれまでの投資額に比して非常に安い金額で売却されていることが問題だという。
この「ハゲタカ」を読むと、かんぽの宿売却問題の中身がよく見えるように思う。
小説には、「バルクセール(不良債権の一括売却)」というキーワードが頻繁に登場する。いろんな債権に不良債権を混ぜてまとめて売却するというものだ。
小説の舞台となっている当時、日本の金融機関は大手行を筆頭に軒並み不良債権の早期処理が迫られた。限られた時間とさまざまな政治的制約の中で、各行ともバルクセールによって不良債権を次々と処分していった経緯がうかがわれる。
日本郵政にとって「かんぽの宿」は一種の不良債権のようなものだったのだろう。投資額の元をとるなど到底無理なのはもとより、毎年さらに赤字が増えていくのだから。
住友銀行時代に不良債権処理のエキスパートと言われた西川社長が、当時と同じように、あるいはそれ以上に限られた時間とさまざまな政治的制約の中でかんぽの宿をバルクセールによって処分しようとした心理はよく理解できる。
小説の中でも、バルクセールによって債権が安く買いたたかれていくことよりも、そもそもそのような莫大な不良債権を作ったことが問題視されている。
かんぽの宿の問題の本質も同じところにあることは衆目の一致するところだ。
人はそれぞれの立場によって考え、行動する。
傍目から見れば、なぜこんなやり方をするのかと疑問に思うことでも、当事者にとってみればそれば正しいと信じることはよくあることだ。
個人的には、かんぽの宿をもっと高く売ることはできたと思う。
でも、私が日本郵政の社長ならもっと高く売ったといえる自信はない。
まして銀行における経営実績を買われて、あたらしい超巨大金融業のトップに選ばれた人が
採れる選択肢は限られていたのかもしれない。
誰の眼から見ても正しいといえる言動を貫くのは難しいことだ。
森本 尚孝
- 2009年7月 8日