建設請負と床屋さん

ある中堅ゼネコンの社長がこんなことを言っておられるのを聞いて
なるほどと思ったことがある。

「建設の請負と床屋は似ている。」

今は、あまり床屋という言葉は使われず、理髪店か美容院というべきかもしれない。

自動車や電化製品のような完成品を買うときと
建設の発注との違いを考えるうえでも、わかりやすいたとえ話だ。

施主が建物の施工を業者に請け負わせるとき、
契約段階では建物が完成した姿はまだわからない。
設計図や完成パース、場合によっては模型まで用意されることがあるが、
完成形を想像できる材料でしかないし、まして出来栄えなどは
終わってみないと想像もつかない。

床屋も同じだ。
写真や説明で、こうやってああやってと指示するけど、
最後にどんな仕上がりになるかまでは、終わるまでわからないだろう。

私たちは、床屋をいろんな判断基準で選んでいる。
・店のイメージ
・カットしてくれる人の雰囲気
・うわさ(雑誌や口コミ)
・立地
・価格
など。

基準のほとんどは、期待値をもって考えることになる。
明確なのは価格だけだ。
でも価格だけで選ぶ人はいないだろう。
むしろ多少の差なら価格を優先する人は少ないのではないか。

カット代は金額的にしれているが、建物の建設費は高額だ。
だから、建設工事の発注では価格を重視せざるを得ない。

つまり、床屋は期待値で選び、建設業者は価格で選ぶ。
結局のところ、こういう結論に至ることが多い。

でも、床屋なら失敗してもまた数か月立って他の床屋に変えればいいかもしれないが、
建物はそうはいかない。
簡単にやり直しがきかないからだ。

となると本来、建設業者の選定においては床屋以上に期待値が重視されるはずだ。

もっとも、お互いの相性もあるし、お施主様にとって
請負のパートナーを選ぶというのは本当に難しいことだと思う。

森本 尚孝

  • 2009年7月 1日