更地から更地まで
更地とは、自然のままの地面の状態をいう。
人類は、英知・経験とエネルギーと資財を投入して無から出来うる限り完璧な物を創り上げる。
しかし、できたものを壊してもとどおりにする事にはあまり関心も配慮も示してこなかった。
そのことが今、人類に大きな負担となって圧し掛かってきている事は周知のとおりだ。
身近なところではペットボトル。
軽量安価でビンに替わるものとして登場以来、圧倒的に我々の生活を支配してきた。
しかし、これが考案され製造され始めたとき、
残骸の処分・リサイクルまで考慮されていたかははなはだ疑問である。
現在の技術をもってしても、原油から造られ原油に戻しているとは言い難く、
環境問題からリサイクルの方法を改めて考えて研究している始末である。
アメリカ海軍の航空母艦。現役時代は不沈空母とか言われ、
世界中の海を我が物顔で航行していたその空母が退役した。
普通考えればスクラップにして新たな鋼材として再利用すると思われるが、
沈没させ魚のアパートにした。
このことを設計・建造段階では到底想定していなかったと思われる。
末は魚のアパートならばもっと魚に喜ばれる内部構造にしたかもしれない。
建築においても同様のことが言われ始めている。
例えば原子力発電所。
安全の為出来うる限り頑丈に設計・建造され、放射能を封じ込める事により、
多大なクリーンエネルギー(CO2排出という面で)を供給し、
社会に大きな貢献をしたことは否めないが、
それらに寿命が来つつあり、その解体・再生が大きな課題となっている。
前述のごとく建造したのであるから解体は容易ではなく且つ、
封じ込められた放射能の処理や高レベル放射能下での作業方法など問題は山積である。
建設会社が更地に建築物を造るとき、
一般的にはそれを更地に戻すことを考えて設計・建築はしないものだが、
個人住宅をはじめオフィースビルなどいろいろの建築物が寿命を迎えたり、
大都会では土地の有効利用の観点から解体⇒新築(建替え)が頻繁に行われるようになり、
それが建設会社の大きなビジネスチャンスにもなってきている。
そこで問題になるのが更地に戻す方法である。
今、建替えようとされている建築物は、新築される超高層ビルに比べて低層で
従来からの方法で何とか解体できたし、
日本ではほぼ不可能であるが、アメリカでは爆破による解体で一気に片をつける方法も
良く用いられる。
いずれにしても比較的容易に更地に戻すことが出来た。
だが今後はそう簡単にはいかないだろう事は、
東京・ニューヨーク・香港の超高層ビル群を見れば想像が付くであろう。
ピラミッドは月日が経てば自然の風化により、
何時かは(それまで人類の歴史が続いているとして)更地に戻るかもしれないが。
その解決法の一つとして、鹿島が自社本社ビルをだるま落としで解体して見せた、
日本で最初に超高層ビルを手がけた会社として当然の使命感かもしれない。
これからの建設会社は「更地から新築」だけではなく、
「解体から更地」を意識した方向に向かわざるを得なくなってきたような気がする。
また、そこに大きなビジネスチャンスが在り、
土地所有者との子々孫々までに渡る信頼関係が構築できるのではと考える。
川端 康司
- 2009年6月30日